給食特集 神尾記念病院(運営=エームサービス)

1995.03.20 72号 13面

医療法人財団・神尾記念病院(東京都千代田区、03・3253・3351)はベッド数三六床、耳鼻咽喉科の特科だけを手がけており、患者は全国からやってくる。神尾友和院長は「医業はサービス業。患者に病院が選ばれる時代を迎え、赤字が出てもこれは考えていかなくてはならない」と、インフォームドコンセントや病院のアメニティーなど二次的サービスにも積極的に取り組んでいる。その一環として食事についても「料理の鉄人が高視聴率を得て一億総グルメ時代の患者に提供する食事はしっかり外食ニーズを組みこまないとだめ」として、「良質な医療の根幹は患者に安心感と満足感、信頼感を持ってもらうことである」という自論を給食面でも実践している。

病院は大学病院が点在する神田淡路町。平成元年に秋葉原から移転新築した。一階はティーラウンジ、二階が待合ホール、三階は検査室、四階は手術室、五階が食堂、六、七階が病室となっている。通りすがりに眺めるティーラウンジは病院のイメージからかけ離れ、ゆったりとくつろげる喫茶店の趣きがあり、病院の特徴を印象づけている。

給食は新築した当初からエームサービス(株)に委託し、管理栄養士一人(病院所属)、栄養士二人、調理師一人、パートタイマーで対応している。平均入院日数は八・四日。特徴はカフェテリア方式を取り、隣の公園や街を一望しながらベランダでも食事が取れるように開放的なこと。調理は一階で行い、五階の食堂で盛り付けをする。サービススタイルは普通の外食のカフェテリアと同様で食器も陶器を使用。食堂内は黒の調度で統一し、患者の交流はもとより、面会に来た人達との談話室としても利用。囲碁やファミコンなども置かれ、食堂兼娯楽施設兼の多目的ホールの役目を果たす。

食事は昼のみの選択メニューだったものが、昨年10月から三食好きなメニューを選べるようになった。「食事は楽しく、目で楽しみ、頭で考え、舌で味わえるきめ細かなメニューを心がけている。サイクルメニューではないので入院中に全く同じ食事が出るということはない」という。食事提供時間は朝食8時、昼食12時、夕食6時でそれぞれ一時間をみている。

昨年10月から病院給食は六〇〇円の一部自己負担制となり、来年10月からは八〇〇円となる。この規定された以上のサービスを有料で望む患者には、ティータイムなどで一階のラウンジ機能を活用するサービスを行っている。また、より患者の満足度を高めるために新患の外来患者に一枚、入院患者は一〇日目ごとに一枚ラウンジの飲料無料利用券を配布している。

同病院の最も注目するところは、「患者自身に評価されるとどうなるか」と、自己満足に終わらせず、「退院時アンケート」として病気や医師、看護婦、薬剤師、食事などの点について細かく五点法でアンケートを取り、それを謙虚に受け止めて改善に努力していることである。表は直近の昨年7月~今年1月の食事についてのアンケートを分析したもの。

他のアンケート項目の結果に比べると、かなり辛い結果となっている。夏休みや冬休みを利用して入院する患者が多く、その時期は手薄になり、サービスが低下していることも如実に現れている。「特に全国から集まる患者はそれぞれの地域特性を持った味覚、食習慣があり、個別の対応がどうしても必要」と分析しており、よりきめ細かな対応を試みている。

「二一世紀は人間復活の時代。ハードからソフトの時代となる。個々への対応がますます大事になってくる。感覚の問題を基盤にして病院サービスを考えなくてはいけなくなる。食事も病院の大切なサービスであり、委託業も一貫したサービス体制からさまざまなニーズに応えられる柔軟性と高技術が要求されるようになる」と神尾院長は病院給食の課題と展望を語った。

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