施設内飲食店舗シリーズ 「メトロ・エム」東京・文京区 女性のグッズが主体
営団地下鉄丸の内線の後楽園駅。一日の平均乗降者数約五万人。ここ数年ほとんど変らない数字だが、東京ドームでのプロ野球やイベント、また、場外馬券売場の営業時には三割増の乗降者数になり、駅周辺は人の往来で活気を呈する。メトロ・エムは営団地下鉄(事業開発部)が、駅の改良工事に伴って駅ビルを建設したもので、昨年4月にグランドオープンした。地下二階、地上六階の建物で、地下一階から地上六階までに衣料・アクセサリー・雑貨などを主体とした物販、和洋・ファストフードなどの飲食店舗が出店する。店舗は物販関係が二〇店、占い二店、飲食一二店の計三四店。地域唯一の大型商業施設で、隣接地の後楽園ゆうえんちおよび東京ドームの施設群と連動して、界隈への来街動機を大きく喚起している。
営団地下鉄丸の内線は、荻窪‐池袋間(二七キロメートル)を結ぶ地下鉄で、途中新宿副都心および一大ターミナルの東京駅(丸の内)、ビジネス街の大手町を経由する。
後楽園駅は文字どおりに、日本有数の都市型レジャーランド「後楽園ゆうえんち」に接しており、また、東京ドーム北側のプロムナードデッキとも接するというロケーションにある。
この駅は全線二四駅において、四谷、茗荷谷駅と共に珍しく地上に出る駅舎で、メトロ・エムはこの駅舎の敷地内一二〇〇坪内に建設されたものだ。
駅の改札口は一階および二階部分に位置しているが、各階へのショッピング施設には一階の専用出入口からアプローチする。
店舗は地下一階から地上六階の全フロアに出店しているが、やはり、主力を成しているのは衣料、ファッショングッズ、アクセサリーなどといった女性グッズの店だ。
代表的な店は「OCTOPUS・ARMY」(ファッショングッズ)、「クラブモナコ」(同)、「原宿カルサドール」(レディースシューズ)、「PARIS・KID’S」(アクセサリー)、「宇宙百貨」(バラエティ‐グッズ)などで、客の大半は若い女性が中心だ。
店舗面積四〇坪、客席数七四席。すべてテーブル席で、木造り感覚の店だ。家族亭(本社・大阪)は大阪三八店、東京二一店と計五九店をチェーン化しており、地味な存在だが着実に店舗数を伸ばしている外食企業だ。
そば・うどんが売りもののチェーン店で、大阪名物のきつねうどん五五〇円をはじめ、木の葉うどん七八〇円、けんちんうどん九〇〇円、山菜そば七五〇円、鴨南ばん七五〇円、天ぷらそば九五〇円などが看板メニューだが、この店の人気メニューは、オリジナルの手打ち(つなぎ粉を混入しない生一本純そば)おろしそば八〇〇円、三宝そば(ゴマ、かつお、のり)八三〇円ほか、特盛天ざる、和風ハンバーグ弁当、焼肉弁当八八〇円など。
客層は平日の昼はサラリーマンやOL、土・日はファミリー客やカップルが主体になる。
客単価は平均九三〇円だが、夜はアルコールも出るので一二〇〇円に上昇する。客数は一日平均三〇〇人前後。メニュー構成からして老若男女の来店動機を喚起できるので、土・日は平日の二倍近い客数を吸引する。
土・日は会社を休みにするところが多いので、サラリーマンなどの利用が激減するが、これに代わって、隣接地の後楽園ゆうえんちや東京ドームからのファミリー客やカップルなどのレジャー客が流れてくるということだ。
月商一〇〇〇万円だが、これは目標数値だという。(営業時間11時~22時30分)
メトロ・エム最上階の六階。全フロアを使っての出店だ。厨房を含め、店舗面積一二〇坪。客席はテーブル席一一二席、座敷が二部屋で六八人収容。このほかに、カラオケルーム九室(六二人収容)を併設している。
ソフトな日本情緒の雰囲気で、女性の感性にアピールした店舗だが、企業の管理職クラスの飲み会にも対応できる高級感も漂わせている。
全国にエスカイヤクラブやワインバーなどチェーン化する大和実業(本社・大阪)が経営する店で、この店は東京地区では八店舗目の出店だ。
定番はチンゲン菜おひたし三〇〇円、冷しトマト三八〇円、たこキムチ四八〇円などの酒のつまみをはじめ、チンゲン菜バター炒め三〇〇円、森のきのこのフーセン焼き五八〇円、おでんの盛合せ六八〇円など。このほか、焼き物、揚げ物三八〇~六八〇円、刺身・焼き物・揚げ物の盛合せ各一五〇〇円など約六〇品。
飲食店舗は地下一階にマクドナルド、クレープハウス・ユニ、ホブソンズ、ヴィドフランス、和幸(弁当)、ちよだ鮨など六店、地上二階にアフタヌーンティールーム、五階に和幸、家族亭、五人ばやし、タントタントなど四店、六階に櫓茶屋と計一二店を出店するが、同一施設内にこれだけの数の飲食店舗を集積するのは地域ではメトロ・エムくらいだ。
一階はすべてファストフードおよびテークアウト機能の飲食店舗、五階に和・洋、六階は全フロアをカラオケルーム併設の酒処、和食処一店舗が占めるというフロア構成だが、とくに地下一階の出店コンセプトは、後楽園ゆうえんちおよび東京ドームからのレジャー客の飲食ニーズ、とくにテークアウト需要が見込めるとの考えで、FF系の店舗を集積するという結果になっているのだ。
後楽園ゆうえんちおよび東京ドームのレジャー、アミューズメントゾーンには年間三〇〇〇万人と、都市型の歓楽地においては日本最大の集客があるが、これら施設のレジャー客が周辺の飲食施設に流れ込む機会は多い。
事実、メトロ・エム大半の飲食店舗が、土・日などには客数が平日の二倍前後に増加するという結果を出しており、集客面に大きな力を発揮している。
東京ドームでプロ野球、とくにジャイアンツ戦の好カードがあれば一試合当たり五万人以上、また、東京ドーム関連施設に場外馬券売場があるので、開設されるときは一〇万人以上の競馬ファンが押しかけてくる。この面での客の流れが期待できるわけだ。
平日は周辺のサラリーマンやOL主体の利用だが、客数に土・日との格差が大きいので、このギャップをどう埋めるかが、施設全体の課題だ。
アルコールは生ビール(中)五六〇円、日本酒(一合)三八〇円、地酒(一三〇ミリリットル)五八〇円、四〇〇円、ウイスキー(シングル)四八〇~七八〇円、各種サワー四五〇円、カクテル四〇〇~四五〇円、ワイン(三〇〇ミリリットル)六八〇円などを揃える。
飲んでよし、食べてよしの運営形態ということだが、客層はサラリーマンやOLが七割、残り三割がミセスのグループ客やファミリー客など。
一日当たりの客数は二三〇人だが、土・日は会社が休みになるので、客数は平日の四割くらいにとどまる。
平均客単価三〇〇〇円。月商二〇〇〇万円(推計)をキープしている。(営業時間11時~21時)
施設データ
・施設名称/後楽園駅ビル(メトロ・エム後楽園)
・所在地/東京都文京区春日一‐二‐三
・オープン/平成6年4月
・事業主体/営団地下鉄
・敷地面積/一一〇〇坪
・建築面積/七〇〇坪
・延床面積/二五〇〇坪
・飲食店舗出店リスト
〈地下一階〉六店/マクドナルド(ハンバーガー)、クレープハウス・ユニ(クレープ)、ホブソンズ(アイスクリーム)、ヴィドフランス(ベーカリー・カフェ)、ちよだ鮨(寿司)、和幸(弁当)
〈地上二階〉一店/アフタヌーンティールーム(ティールーム・ベーカリー)
〈五階〉四店/和幸(とんかつ)、家族亭(うどん・そば処)、五人ばやし(和風ラーメン・甘味)、タントタント(イタリア料理)
〈六階〉一店/櫓茶屋(酒処・和食・カラオケパーティールーム)
店舗面積五坪。テークアウトオンリーの店で、にぎりずし、巻物、丼物、セット物など五〇種(三五〇円~二〇〇〇円)を提供している。
この小さな店で、プロ野球のシーズン時には月間売上げが八〇〇~八五〇万円に達する。客単価は一一〇〇円だが、一日平均二五〇人前後(日商二八万円)、坪当たり五万円以上を売るという計算だ。
しかも、シーズン時の土・日には一日の売上げが五〇万円(坪一〇万)に達する場合もあり、FFショップ並みの売上げを示す。
すしを食べながらの野球観戦という図式だが、やはり、すし、巻物のニーズは強いということだ。
しかし、野球シーズンが過ぎると、オフ時はシーズン中の七割の売上げに低下する。出店の性格から後楽園ゆうえんちや東京ドームからのレジャー客をどう多く吸引するかが、この店の大きなポイントになるということだ。(営業時間10~21時)