ラーメン特集 ラーメン店探訪 「らーめん松もと」「まるはちラーメン」
不動産業の興亜商事(株)が、「らーめん松もと」本店を上野にオープンしたのが一五年前。以後、三店舗を加えたが、三年前新宿店を撤退、現在は、上野本店、池袋一・二号店の三店舗を運営する。
バブル期より売上げが三~四%落ちたが、一五年変わらず客に支持されているのは、「良い味と、店員のサービス徹底の“努力”によるものです」(松本奉文代表取締役)という。
人の味覚は十人十色。良い味としたものが万人に受け入れにくい。「私が好きな味を提供し、一〇人のうち三人に受ければ良い」と言い切るだけに、週一回以上は、必ず同業他店のみならず、飲食店へ味の探求に出掛ける。
「東京のラーメンだけでやれる店は、一〇店だけ。ここでの“後を引く味”を探り試作するが、まだまだ及ばない」と、ラーメンの奥の深さを披瀝する。
麺は、一五年間同じものを仕様発注でメーカーから入れ、「支那そばは、うちが元祖」というだけに、細く縮れた麺の「支那そば」(五五〇円)、「ネぎ支那そば」(七五〇円)を中心に、太麺の「みそらーめん」(六〇〇円)、「しょうゆらーめん」(五五〇円)、「しおらーめん」(五五〇円)など一三アイテムを置く。
ユニークなのは、創業以来、五〇円増しでたきこみごはん、おにぎり、半ちゃんセットにしたり、トッピングにチャーシュー(三〇〇円)、メンマ(二〇〇円)、バター(一〇〇円)、コーン(一〇〇円)などを置き、客にチョイスさせていることだ。
五感で味わうラーメンとして、味もさることながら、一年一回は店内改装し、明るい清潔感を打ち出したり、テーブル席のみを設け、ゆったり感を出すなどして、六割を占める男性客に女性客の集客アップを図る。
また、「店の訴求力を効率良く出したい」として、今までは、各店が同じやり方で展開していたものを、各店の地域性を出した店づくり、文字だけだったメニュー表を、具体性をもたせた写真入りにするなど、4月から新しい展開を試みる。これによって客単価一五〇円アップをにらんでいる。
ラーメン店は、「オヤジがカウンターに入り、客を見て甘口か辛口を読み取るぐらいの気合いが必要」だが、チェーン展開のため、自らはカウンター外に置き「自分がうまいと思った味を徹底させている」。
毎月10日は、各店店長、チーフを集め、経営全般についてのミーティングも行っている。
「ラーメンだけでやれる店は限られている。これからは、専門店に色づけして、半ちゃん、おにぎりなどをセットとしていく流れとなり、これを、どう展開させるかが、今後の課題」とする。
《らーめん松もと池袋店》
〈創業〉昭和64年
〈所在地〉東京都豊島区池袋三‐二五‐一五、IB第一ビル Tel03・3988・3241
〈営業時間〉午前11時30分~翌朝4時
〈店舗面積・席数〉二五坪、三〇席
〈従業員数〉一一人、アルバイト二人
〈客単価〉七八〇円
〈一日当たり来店客数〉五〇〇~六〇〇人
〈平均月商〉一一〇〇~一二〇〇万円
〈客層〉六割が男性
〈人気メニュー〉みそらーめん(六〇〇円)、ネギ支那そば(七五〇円)、しょうゆらーめん(五五〇円)、支那そば(五五〇円)
価格破壊が叫ばれ、安売り合戦が行われる中、世の流れに逆行し、去年の秋口、一杯五〇〇円を基本にやっていたものを六〇〇円とした。
「街道ラーメンのため中盛り、大盛りのリクエストが高く、満腹になってもらおうと一〇〇円アップと同時に、器を一回り大きくし、通常一五〇gの麺を二〇〇gに増量した」(曽根昭彦統括マネージャー)ところ、反応は良く、現在、直営三店、FC一店で実施しているが、最終的にはこの方向でいきたいとする。
八〇%が男性客。そのための新メニューとして「ニンニクラーメン」を開発、直営二店で実験中。ニンニクを油で揚げ、焼鳥風串刺しにしてラーメンに乗せたものだが、ダイナミックさと目新しさから若者に受けそうだという。
麺の太さ、硬さ、スープ、たれのバランスがうまさにつながるとして、麺は仕様発注の中太半分ちぢれの硬麺。スープは、トンコツにあらずトンコクだ。白湯スープだが、関東風にあっさり味。豚のゲンコツ、背骨、鶏がら、海の幸、山の幸、鰹節など使うが、海・山の幸を減らすと九州ラーメンに近くなる。そのほか、醤油味の江戸だしと味噌味の三種類を柱とする。
全店味の均一化をはかるため毎朝マニュアルに従ってスープをつくる。たれは、スープとのマッチングを最も要求されるとして、本部から供給される。
基本メニューは「トンコク」「江戸だし」「味噌」の三種が六〇〇円。「ネギラーメン」「メンマラーメン」「わかめラーメン」各七〇〇円。「チャーシューラーメン」「バラ肉ラーメン」各九〇〇円。プラス一〇〇円で特盛となる。
「コストダウン化は、大きな課題。本部からは麺、スープ、たれを供給し、その他は各店の自由だけに、原価意識が要求される。店内に券販機を設置し省力化と同時に合理化をはかったり、本部が、もともと内装工事業だったことから、合理的な作業動線の店舗設計にしたり」と、さまざまなアドバイスをする。
「まだまだコストダウン化の意識が薄く、これからは血の滲むような努力が必要」でよりきめ細かな経営指導を行うという。現在二一店舗だが、今年の出店数は検討中だ。
《まるはちラーメン》
〈創業〉昭和58年4月
〈所在地〉東京都世田谷区千歳台三‐三‐一七 Tel03・3484・2461