厨房のウラ側チェック(72)PL法と飲食店(その5)
PL法のポイントの二番目として、今回は損害について述べましょう。
損害は従来から採用されている相当因果関係により判断されます。この損害賠償の範囲は民法第四一六条に規定されていますので引用して説明しましょう。
相当因果関係の法理とは、その基本が個々の事案ごとに、被害者の被った損害が通常損害であるか、特別損害であるかを検討し、通常損害に該当する場合は賠償の範囲となります。また、特別損害に該当する場合は不法行為時にその損害発生について当事者が予見可能であったかどうかを判断し、予見可能性があったときには賠償責任を認めるというものです。
通常損害とは、当該債務不履行によって通常生ずると予想される損害をいいます。特別損害とは、当該債務不履行からは通常生じないが、特別の事情により生ずる損害をいいます。しかし、特別損害は原則として損害賠償の範囲に含まれないが、債務者が予見しまたは予見し得る場合は含まれることになります。
そこで、PLの損害賠償の範囲を具体的な科目でいうと、治療代、入院費用、治療に要する期間の休業補償費、慰謝料なども認められることになります。特に慰謝料の算定に当たっては、被害の内容と程度、被害者の年齢、生活水準、社会的地位、加害者の年齢、職業、社会的地位などが考慮されることになります。
ここで、もう一度PL(製造物責任)について整理しておきましょう。PLは欠陥があれば故意・過失がなくても責任を負うということで無過失責任といわれますが、欠陥がない限り責任を負うものではありません。しかし、PLも損害賠償請求であるために(1)損害(2)製造物の欠陥(3)損害と欠陥の因果関係、の(1)から(3)の立証責任は原告(被害者)側にあるのが原則です。
では、飲食店とPLの問題で食中毒を例にとるとどうなるでしょう。欠陥は、レシピー、調理、保管保存、その他によるミスによって発生し、その結果、ミスした食品などにより食中毒の患者が医療機関により診断され、食品衛生法第二七条によって保健所に届けられ、行政により食中毒の証明がなされると、今回の損害が加害者に請求されることになるわけです。
次回は、PLPを中心に話を進めたいと思います。
食品衛生コンサルタント
藤 洋