特集・デリバリーピザ ドミノ・ピザの新戦略 新商品の販促効率化、コスト圧縮

1995.06.30 79号 2面

これといった目立った戦略もなく、従来のスタンダードなコンセプトのままマイペースな展開を進めて来た「ドミノ・ピザ」だが、ついにその重い腰を上げた。6月24日からクリスピータイプのイタリアンクラストをアイテム化。レギュラークラスト、イタリアンクラストいずれかのチョイスオーダーを始めた。7月からは都内を皮切りに顧客管理システムを導入する。また、このほど二輪バイクによるデリバリーのアンテナ展開も始めた。業態をリードする「ドミノ・ピザ」が数々の新たな戦略を打ちだすことで、業態に大きな波紋が広がるのは間違いない。デリバリーピザ新時代の幕開けを予感させる「ドミノ・ピザ」の取り組みを追った。

新登場するクリスピータイプのイタリアンクラストは、米国ドミノがライトニーズ高揚に応じて開発したもの。厚さ三ミリメートルほどでサクッとした香ばしさが売り物だ。アイテム化に先べんを付けた米国ではオーダーを二~三割アップさせた実績を持っている。

価格、トッピングの種類、コンベァーオーブンの焼成マニュアルは従来のレギュラークラストと同様。ユーザーがオーダーの際にレギュラー、イタリアンのいずれかをチョイスする。オーダーの約二割がイタリアンに流れると見ているが、なかでも、従来のヘビークラストではつかみづらかった、軽食ニーズからの新規オーダーに期待している。

「デリバリーピザが広がる前はクリスピーが主流(日本では)。ユーザーアンケートでもクリスピーの要望が強く、潜在ニーズは大きいはず。新クラストがもたらす新規ユーザーからの売上げを上乗せしただけで、最低でも対前年比一〇五~一一〇%の売上げを見込んでいる」(アーネストM・比嘉社長)と胸を張る。

他社の反応は、いまのところ静観がほとんどだが、「三ヵ月後に構成比が二割を超えればアイテム化(クリスピーを)せざるを得ない」と、早くも追随に半身を乗り出すチェーンも出始めている。「既存ユーザーがそのままイタリアンクラストへシフトするだけなら意味がない。クリスピーならば食べたいとする新規ユーザーをどのくらい獲得できるかがカギ」(ピザ・ハット)。いずれにせよ、イタリアンクラストは、デリバリーピザ市場を活性化させる試金石として注目されるところだ。

顧客管理システムは7月から導入を始め年内には全店完了する見込み。指摘されていたオーダーの際のわずらわしさを改善、また販促の効率化を図る。

新システムはユーザーの電話番号を入れただけで住所、名前、過去のオーダーレコードが一覧できるほか、その情報がすべて別のDM(ダイレクトメール)システムとオンラインで連結する。DMシステムがオーダーレコードから個々のユーザーのオーダーパターン、味覚嗜好を割り出し、ユーザー個別に見合ったDM、エリアに即したポスティング戦略をひき出す。つまり画一的であった販促をユーザーの数だけ細分化、ピンポイント的な販促でヘビーユーザーを育てるのが狙いだ。

「メニューアイテムはたくさんあるが、ユーザーは自分の嗜好に合ったメニューしか選ばない。オーダーレコードを見ても嗜好に合ったアイテム二~三品に絞られているケースが多く、浮気はほとんどない。嗜好別に分けた数種類のサービスチケットを作成して、ユーザー個々にマッチさせて配る方が、画一的なキャンペーンを打つより効果的」(広報室)

また、新システムにはオーダーを受けてからデリバリーが完了、アルバイトが帰店するまでのタイムスケジュールがすべて記憶される。これを重ねることで、作業のどこに時間の無駄があるのか、また、どのように商圏を取れば迅速なデリバリーが可能か、などを解析する。他にも過剰オーダーの信号を発したり、店長不在時のアルバイト監督が出来る機能を合わせ持つ。

顧客管理システムの導入についてはすでに導入済みの他チェーンから、遅過ぎるという指摘もある。だが、システム導入済みの先発組に見られるソフトは、FC店の正確な売上げチェック、在庫管理、迅速なオーダー処理などを目的としたケースが多い。「ドミノ・ピザ」のように、DMシステムと連動させたピンポイント的な販促や店舗内の作業マニュアルの改善にまで乗り出すのは初めてのことだ。「中途半端なシステムを作ると長続きしない。すべてを満たすため開発には三年を費やした」(広報室)。

他社に遅れてスタートするシステムがどれほどの威力を発揮するのか。巻き返しが見物だ。

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