特集・デリバリーピザ イタリアン路線に脚光 ピッツェリア・オン・タイムの場合
デリバリーピザ店で、さまざまなアイテム化が進むなか、イタリアン路線をたどるメニュー戦略が好調だ。ピザと共通するイメージを持つパスタ、ドリアをアイテム化するその取り組みは、前頁のやみくもなアイテム化とは対照的に専門店のイメージをより色濃く打ち出す戦略である。また、食材や厨房機器の共有化が図れるため、最小限のリスクで確実に収益を上げる方法でもある。このドリアやパスタをサイドアイテム化するチェーンは数多いが、ここで注目したいのはメーンアイテム化のケースだ。ステンレスや陶器の皿を採用して保温力、見栄えをアップ、単価をピザ同等にする本格的な取り組みである。この方法で店舗の立て直しや収益アップに成功した結果が各地で出始めている。新アイテムを模索するデリバリーピザ店に参考になりそうなその展開例を取材した。
東京都新宿区を拠点に展開する「ピッツェリア・オン・タイム」(詳細17面)は3月から「ミートドリア」(パスタ)「シーフードドリア」、(パスタ、いずれも二〇〇〇円)をアイテム化、月商一〇〇~一五〇万円アップを手に入れた。「ピザのニーズと相剰効果が図れて、既存売上げの上乗せが確実に見込めるメニュー」と同社荒井基亘社長はドリア・パスタのメーン化に感想をもらす。
創業八年目の同チェーンはデリバリーピザ店の先発組であるが、いずれの地区にも後発チェーンの出店が相次ぎ、売上げは下降線の一途をたどっていた。新たなピザのメニュー開発を講じても、反応があるのは約一ヵ月、それもわずか月商五〇万円増。ここ一年に限ってはそれすら皆無だったという。
月商四〇〇万円を切った時、打開策として業種を替えてお好み焼きや飲茶をアイテム化した。ところが、それらのニーズはあるもののメーンであるピザのオーダーはいぜんとして下降線。結果としては売上げ四〇〇万円の現状維持がやっとだったという。「ピザとはまったく関連性のないメニューのアイテム化で専門店のイメージが崩壊。ピザの品質に対する信用を失い常連客離れが起きた」と当時を振り返る。
「専門店のイメージを維持したままアイテム化できるメニュー、また、ピザのニーズと相剰効果を図れるメニューを探したところ、ドリア・パスタのイタリアン路線にたどり着いた。「ドリア・パスタのアイテム化はすでに他チェーンが手掛けているがサイド扱いのケースが多い。本格的なメニュー開発で明確なイタリアン路線をアピールするチャンス」と判断、ドリア・パスタのメーンアイテム化に踏み切った。ほかにも目新しさが追い風になる。食材がピザとほとんど同じ、客単価が稼げるというもくろみもあったという。
ここでポイントとなったのがワンウエーのステンレス皿を導入したことだ。保温力、見栄えがアルミ容器に比べ数段アップするステンレス皿は、“最高の状態で届ける”というデリバリーコンセプトを実現するのに不可欠な資材であったのだ。
同チェーンがこれらを始めて四ヵ月目を迎えるが、5月現在、ドリアとパスタの占める構成比は全体の二割。新規ユーザーからのオーダーが多く、またそのリピーターからピザをオーダーされるパターンが増え続けているという。ピザ以外のニーズを掘り起こしながらピザのオーダーも伸ばす狙い通りの相剰効果を発揮したというわけだ。
同チェーンは、よりイタリアン路線をPRするため屋号に“イタリアン・フェスタ”とサブタイトルをつけた。今後もドリア・パスタのメニュー開発に注力、ピザとの二本柱でイタリアン路線のノウハウ構築を進める意向だ。
神奈川県藤沢市で展開する「ピザック」(詳細18面)は、競合一一店舗がひしめく飽和状態のエリアで、トップセールスを誇るが、そのきっかけとなったのが、ドリアのメーンアイテム化であった。五年前のオープン当時、ピザの味には絶対の自信を持っていたが、知名度が薄く後発であるが故、顧客獲得に苦戦、打開策を迫られた。
最初は、「サイドアイテムの強化を考えたが、安易なメニューだと、ピザが売れないための苦肉の策と受けとめられ、ピザ自体にマイナスイメージがつきまとう」(荒川雅人社長)としてドリアのメーン化、イタリアン路線に着目。「海賊ドリア」(二八〇〇円)など三種類をアイテム化した。保温力、見栄えをアップするためにこちらはワンウエーの陶器皿を採用しているが、その他の展開動向は前述「ピッツェリア・オン・タイム」と同様だ。
今後は、デリバリーピザ店から、デリバリーイタリアン店に転換すべく、パスタのメーンアイテム化を急ぐ方針である。
「ピッツェリア・オン・タイム」「ピザック」に共通するテーマは、“あくまでもメーンはピザ、それをどうすれば売れるか”ということだ。売れない部分を補完するためのマイナス的な発想に逆行したプラス志向がうかがえる。デリバリーピザ業態ではさまざまなアイテム化が進められているが、こうしたイタリアン戦略が一つの流れとして定着するのは間違いなさそうだ。