特集・デリバリーピザ データにみる外食マーケット動向 宅配ピザFC
バブル経済崩壊により、九一年以降外食業界は低迷が続いているが、その中にあって唯一元気なのが宅配ピザ分野である。宅配ピザチェーンは大部分FC(フランチャイズチェーン)方式を採用しており、その意味では飲食FCの中でも注目株といえる。
宅配ピザという業態は極めて若い。この業態が日本に登場したのは八五年9月に「ドミノ・ピザ」が一号店を開設したとき(ただし同チェーンはFCはやっていない)で、わずか一〇年たらずの歴史しかない。
ドミノ・ピザが出店した直後、かなり多くの企業がこの分野に進出した。多分二〇以上の企業が宅配ピザビジネスに進出したものと思われる。しかし、チェーン化に成功したところは少ない。失敗した企業は「宅配ピザはシステム・ビジネスである」という認識が足りず、単なるモノマネに終わってしまったからだ。
宅配ピザがこれほどまでに急成長した要因は、(1)便利なサービスを求める消費者ニーズ合っていたこと(2)ライフスタイルの変化から家庭内パーティーの機会が増えたこと(3)子供マーケットを開発したこと(4)ピザは家庭内では作り難いこと(5)配達時間をきちんと約束したこと‐‐といった消費者側の要因がある。また企業側の要因として、(1)立地は二等地、三等地でよく、また客席を設ける必要がないことから小資本で開業できること(2)高い客単価(二三〇〇円前後)、高い粗利益率(七〇%前後)などから、高い収益をあげることができること。つまり、投下資本回転率あるいはROI(投下資本利益率)の面で極めて魅力があったことである。一店舗当たりの投資額は二〇〇〇万円強で、年商六〇〇〇~八〇〇〇万円という例が多いから、投下資本回転率は三~四回転。ROIは低いチェーンでも三〇%、高いところでは六〇%にもなっている。これだけ優秀な投資効率をもっている業態は、外食産業界では見当たらない。
なお、ピザという商品が、パート・アルバイトでも作れるようにシステム化しやすい商品であったこと、また時間経過によってそれほど劣化しないという点でも成長させた要因といえよう。
各チェーンの中期計画をみると、いずれも強気の拡大計画が立てられている。「ピザ・カリフォルニア」は年間四五店の新規出店を目指しているが、「ピザーラ」は年間一〇〇店舗、「ピザ・ハット」は八〇~一六〇店舗、「ストロベリーコーンズ」は八〇店舗、「シカゴピッツアファクトリー」は六〇~七〇店舗といった具合だ。こうした大手、中堅チェーンの計画をみると、向こう数年間は二ケタ台の成長は続きそうだ。
このように宅配ピザチェーン各社が積極的な攻勢をかけているのは、いち早く一定のシェアを握り、安定した地歩を確保したいという思惑があるからだ。ハンバーガー分野のように大手数社でマーケットが席巻される状況もそう遠い将来ではない。
宅配ピザでは、昨年来いくつかの注目される動きがみられた。その一つは、メニュー価格の値下げである。ほとんどのチェーンが一〇%以上の値下げを実施した。この値下げ、消費を喚起するためというよりも、やはり激化してきた競争への対応策であり、価格競争の幕開けといえよう。
値下げの動きに連動して、食材の海外調達が活発化してきたことも最近の顕著な動きだ。海外から安い食材を仕入れ、値下げに耐え得る体質を作っておこうということだ。本格的な競争時代をひかえ、こうした体制づくりができるかどうかが生き残りのキーポイントになろう。
もう一つの動きは、小商圏向けの小型店の開発である。従来、宅配ピザは二万~二万五〇〇〇世帯に一店という商圏設定で出店されてきた。それを、一万世帯を商圏とする小型店が開発され、出店されるようになってきた。小商圏となれば売上げも小さくなるから、初期投資を二〇~三〇%圧縮、経営的に成り立つよう工夫されている。こうした動きは「ピザ・ウイリー」「テキサスハンズ」など中小チェーンで目立ち、大手がまだ手をつけていないスキ間マーケットを狙った戦略として注目される。