「辛口」客には付かず離れず
*…カウンター席がふさがっていたので、われわれは奥の席に着いた。新宿に程近い私鉄駅のそばで、四〇席ほどの店だが、午後7時近くともなるとほぼ満席に近い状態で、かなり賑やかである。フロア係の一人がおしぼりと割りばしを置いていったが、忙しいせいか手を上げて合図をしても気が付かない。
*…カウンター内で調理に当たっている主人公の目も、客席の方には向けられないようで、すぐ目の前の常連らしい客との話し合いに夢中で、終わる気配がない。やっと届いたビールも冷えていない(売れ行き見込みによる対応)。料理も、オーダー順は分かるが、すでに常識範囲の持ち時間は過ぎている。
*…責任者は、特定のお客との対応に片寄ることもなく、手を動かしながらでも店内全般に目を向け、フロア勤務者のロスをカバーせねばなるまい。店側はお客に対し、常に付かず離れず、サービスが平均に行き届くよう心がけることが基本。運営に対する方策を確立しておかないと、気が付いた時には遅い。こんな状態では二度と立ち寄る気がしない。