総点検-激震下の外食・飲食業 大庄「庄や」「やるき茶屋」
大衆割烹「庄や」および「やるき茶屋」を柱にして、大庄グループ(本社=東京・大田区)は、串焼「949」、居酒屋「呑兵衛」、割烹「虹の郷」、しゃぶしゃぶ「大和路」、欧風田舎料理「オーラ・ラア」、中国料理・ラーメン「にんじんや」など業態の多角化を進め、今年6月末現在約四五〇店をチェーン化している。
居酒屋オンリーの天狗とは対称的で、大庄は企業全体で捉えてみれば、飲食ビジネスの総合化を目ざしていると理解することができる。
天狗も一部パイロットショップ的な動きとして、郊外ロードサイド立地で、和洋のレストランを二店ほど出店しているが、現在のところはビアレストラン(居酒屋)としての地位にとどまっている。
もっとも、大庄グループの場合、自社での多業態化に加え、企業買収や吸収合併、資本参加などによる事業の拡大もあり、この点では飲食業界の中でも極めてアグレッシブな経営姿勢にある。
主力業態の庄やおよびやるき茶屋は、今年6月末現在、前者が二四五店、後者が八二店で、この二本柱で全体の七割の出店ウエートを占める。
この二つの業態は基本的には同一の出店コンセプトで、メニューおよび価格構成においても差異はないが、これはビールのブランドで出店を分けているのだという。
つまり、「庄や」がサントリー、「やるき茶屋」がアサヒビールということだ。
庄やおよびやるき茶屋は、“飲みどころ、食べどころ”という業態の位置づけで、老若男女多様な飲食ニーズに対応していこうという出店戦略であるわけだが、そのためにはメニューの広がりもやむをえない面もあるのだ。
しかし、メニュー政策の今後の考え方としては、常に新メニューの開発に取り組むほか、店舗サイドでのオリジナルメニューも加えて、料理人の個性や地域特性も打ち出していく考えにある。
この点は、全店統一メニューおよび“コックレスシステム”にある天狗とは大きく異なった運営形態だ。
大庄は食材については年内にも「チルドクック」のシステムを開発し、明年に一部導入、九七年度は全面導入を実現する方針だ。
すなわち、冷凍物を減らして、先行きは生鮮および旬の材料を供給していくということだ。このためには、すでに一部魚介類については生産地からの直接買い付けも具体化している。メニュー単価は四〇〇~六〇〇円前後がボリュームゾーンで、客単価は天狗よりやや高く二五〇〇円。一店舗あたりの売上げは年間一億円。粗利六四%。
店舗出店については、直営方式に加え、入社五年以上の社員を対象にした「独立のれんわけシステム」(無担保最高五〇〇〇万円の融資)もあり、すでに全店の五割がこの制度による出店だ。
九五年度目標は売上高三七〇億円。出店数三五〇店。前年比それぞれ一〇%増以上の伸びを見込んでいる。
庄や、やるき茶屋の店づくりは天狗の「洋風」に対し、「和風」(「四ツ目住宅」の設計思想)づくりが基本で、フロア構成はカウンター、座敷、土間、囲炉裏、奥座敷という展開で、サラリーマンからファミリー、また、個人、仲間同士から接待利用まで、多様な使い方ができる。
店舗面積は天狗チェーンと同じ規模の五二坪、客席数一一〇席だが、大庄はこれを付加価値創造の一環として、席数を一割ほどカットし、ゆとりの空間を生み出すことも検討している。
「効率の追求ばかりではなく、客の立場に立っての居心地のよさ、気分のよさということも大切なことだと考えております。それによって来店動機を高めることができたら、長い目でみれば店の経営にとってプラスになることであると思うのです」(大庄取締役総務部統括本部長大内靖夫氏)
“詰め込み主義”の運営形態から、ゆとりの空間をアピールしていこうという考え方にあるということだ。
メニュー構成は、看板料理の刺身類をはじめ、煮物、焼物、揚物、炒物、鍋物、ご飯物、サラダ、デザート類とバラエティーに富んでいる。
メニュー数はグランドメニュー一〇三品目、季節(旬)メニュー一五品目、宴会メニュー四品目、ファッション(創作)メニュー一五品目、店舗オリジナル(おすすめ)メニュー五~一〇品目とトータルで約一五〇品目をラインアップしており、天狗の二倍にもおよぶメニューアイテムだ。
このうちの売れ筋メニューは五〇品目前後。全体的にみれば、効率の悪いメニュー政策という印象を受ける。
「この10月にメニュー改定をおこなう予定で、もう少し絞り込むことになるかもしれませんが、私どもは一方においては、“和食レストラン”という業態コンセプトを意識しておりますので、重点的な課題としては使う食材の質を高めていくことが最優先と考えております」(大内統括本部長)
〈(株)大庄〉
・所在地/東京都大田区大森北一‐二二‐一
・設立/昭和46年11月
・資本金/九億八二〇〇万円
・代表取締役社長/平辰
・店舗数/直営一五六店、FC一四七店、計三〇三店
・売上高(平成6年度)/三三三億円(前年比一〇・〇%増)