FCビジネス点検 「つぼ八」若者ターゲットに“居酒屋文化”創造
つぼ八は村さ来と並ぶ“ニュー居酒屋チェーン”の旗手として、八五、六年ごろハイテンポで店舗数を伸ばし、若者層をターゲットに、“居酒屋文化”を興したのは広く知られたところだ。
しかし、九二年からのバブル経済の破綻で、その後は収益力が落ち、出店にブレーキがかかったのは、他の飲食チェーンと変わるところがない。
また、つぼ八は九二年に起きた“伊藤萬事件”(当時の親会社、現在は会社自体が消滅している)もあって、自らが出店をセーブ、チェーン企業としての活力を失っていた面もあった。
しかし、九四年12月決算では直営三九店、FC四七二店を合わせ計五一一店を出店し、売上高五五七億円(対前年比二%増)の実績を上げた。
これは今年4月、日経流通新聞が発表した「九四年度ランキング」(二五〇社)において、第一八位に位置する売上げ実績で、居酒屋チェーンでは養老の瀧(一二位)、村さ来(一七位)に次ぐ上位ランキングだ。九五年度は新規出店(FC)の上乗せ分が、一四、五店舗、売上げは五七〇億円前後をクリアする見通し。
「外から見られますと活気が乏しいように思われるかもしれませんが、まだまだFC展開には意欲的ですし、本部機能の面では食材の品質管理やメニュー開発、また、店舗のオペレーションにおいては、接客面の質的向上を継続していこうと元気な面はあるのです」(常務取締役野村耕作氏)。
つぼ八の当面の出店目標は六〇〇店だが、これは西暦二〇〇〇年までには達成できる見通しだ。
同業他社との競合もあるので、ハイテンポとはいかないが、FC店サイドでのサブチェーン化が進んでいる面もあるので、出店については楽観視している。
店舗は四、五〇坪の規模、売上げは月間一〇〇〇万円を標準としているが、立地は基本的に人の流れ(乗降客三万人以上の駅前、周辺人口四万人以上の街)が多ければ、どこでも可能だ。
出店投資額は四〇坪の場合で、自己物件であれば内装費約三六〇〇万円、開業費約四五〇万円、これに加盟金四〇〇万円や補償金などがかかる。
総額五〇〇〇万円前後を要するということだが、粗利六二%、純益一八%、資本回収は二七、八ヵ月で可能だ。
初期投資が大きいので“脱サラ”向きのビジネスとはいえないが、既存FC店の三割強が飲食店経営者、二割近くが建築・土木関係、自営業者が同じく二割近く、サラリーマン出身者が一割強、その他(パチンコ、ゲーム、宿泊業など)が二割という構成になっている。
FC展開は北海道、関東、関西の三つのブロックをベースにして全国に展開しており、ナショナルチェーンを実現している。
FC契約期間は五年、立地および物件調査から研修、オープンまでトータルシステムでの加盟店支援をおこなっているが、FC加入の最大の要件は、オーナーに事業意欲「ヤル気」があることが不可欠だ。
つぼ八の客層はサラリーマンからファミリー層まで多様だ。すでにストアブランドの知名度は、首都圏では八割以上にのぼっている。
メニューはこの10月からの秋冬メニューでフード六九、ドリンク四五品目で、平均客単価二三〇〇円。フレッシュな素材を安く、明るさと気軽さが売り物の居酒屋チェーンということだ。
(しま・こうたつ)
・企業名/(株)つぼ八
・ストアブランド/「つぼ八」
・設立/昭和57年4月
・所在地/本社・東京都台東区東上野五‐二四‐八
・電話/東京03・3843・9295、大阪06・243・1460、札幌011・644・3035
・資本金/五億円
・代表取締役社長/大島勝
・店舗数/直営三九店、FC四七二店(九四年12月期)
・売上高/五五七億円(同)