今年のカマンベールチーズ事情 高級・バラエティー化の2極分化へ

1995.11.06 88号 11面

昨年のカマンベールパンのブームも、一段落した感のある今年。カマンベールチーズの需要は、全体的に安定期に入ったようである。しかし、ブームが落ち着いたかにみえるなかで、カマンベールチーズは、確実に日本人の食生活に定着しつつある。その中でも特に、今年の傾向として、カマンベールチーズの高級化とバラエティー化という二極分化が、より顕著になってきたという点が特筆できるだろう。

カマンベールチーズの高級化といった傾向は、フランスから空輸される生タイプの需要の伸びによって示される。生タイプとは、わが国で主流を占める国産の殺菌タイプのカマンベールチーズに対して、殺菌されないタイプをいう。この生タイプは殺菌されていないため、賞味期間は約一ヵ月程度と非常に短い。ちなみに、従来からの殺菌タイプは、約四ヵ月保存可能である。

賞味期間が短く、しかも保存温度や湿度に気を使う、デリケートな生カマンベールチーズが伸びているのは、ひとえにその風味の違いによるところが大きい。特に、フランスを初めとした国々から輸入される生タイプは、カマンベールチーズ独特の風味がかなり強い。また熟成が進んでいない若いうちは、中心部にチョークのような芯が残り、熟成が進み過ぎるとアンモニアのようなにおいが強くなる。ちょうどフランスに、寝ぼけまなこのナポレオンが、カマンベールチーズのにおいをかがされ、奥方の体臭と間違えたという小話があるが、この話もなるほどとうなづけるようである。

もっとも、この熟成による風味の違いも、裏を返せば、自分で好みの熟成度合いが選んで食べられるようになったということだ。この生タイプのカマンベールチーズは、現在ではホテルやフランス料理店などで需要が多いが、少しずつ家庭用の需要も広がってきているという。日本にもカマンベールチーズマニアが、増えつつあると言ってよいであろう。

身近な新メニュー

一方、バラエティー化傾向とは、カマンベールチーズを使ったアイデアメニューが、より庶民に身近なレベルで増えてきたという点にみられる。なかでも、今年の話題メニューとしてあげられるのが、カマンベールチーズのチーズフォンデュだろう。もちろん、このようなメニューは本場フランスにはない。日本独特の新しい食べ方である。

例えば、東京の渋谷や六本木に店舗を構える居酒屋チェーンでは、カマンベールチーズの上面に十字型の刻み目を入れ、オーブンで焼き、中がとろりとなったところでガーリックトーストとポテトを添えて、客席にサービスする。白カビに覆われた外皮が器の役目をはたし、見て楽しく食べておいしい一品である。

そのほかにも、カマンベールフォンデュの作り方には、上部をくり抜いて中にガーリックのみじん切りと白ワインを入れ、電子レンジで加熱する。また、小さな土鍋に丸ごとのカマンベールチーズを入れて、白ワインをひたひたになるまで注ぎ、火にかけて溶かすなど、さまざまな「流派」があるようだ。新しいメニューをお考えの方は、ぜひ一度試してみられてはどうだろうか。

タイプもさまざま

このほかにも、カマンベールチーズのメニューとして目新しいものには、カマンベールのピザがある。これは普通のピザの上に、単純にカマンベールをトッピングするものだが、二種類のチーズの味わいに意外においしさがある。また、このような外食メニューとしての使われ方のほかに、マスセールをされている商品にも、カマンベールチーズ風味のデニッシュペストリーや、スフレタイプの菓子といったものなどが登場している。

全体として、カマンベールチーズを応用したアイデアメニューの開発は、昨年に増して進行しているといえよう。このようなバラエティー化に拍車をかけたのは、カマンベールチーズをブレンドした、さまざまな形のチーズの発売によるところも大きい。現在、これらのタイプのチーズは、スライス、ダイス、パウダー、ペーストなどが、主に業務用として販売されている。

いずれにしても、カマンベールチーズは「飽食の時代」などと言われて久しい現代にあって、まだまだ日本人の中に定着する可能性を秘めた、魅力ある商材といえるであろう。

11月11日は「チーズの日」。この日の由来は、現在から約一三〇〇年前の平安時代中期、時の文武天皇によって、国内の四五ヵ国に「蘇」という、チーズのような乳製品の製造と朝貢が命じられたとの史実に基づいている。この詔勅が下された日が、現在の暦に直すと11月。そして覚えやすいように11月の11日と定められた。

今年は11月の10日と11日、このチーズの日を記念して、東京の青山スパイラルホールでチーズフェスタ’95が開催される。国内外のさまざまなチーズの展示や販売。チーズ料理の紹介などに加えて、チーズサービスコンクールの優勝者と滝田栄さん、中村あずささん、カーリー西條さんなどによるチーズサービスショーなど、盛り沢山の催し物が用意されている。

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