食肉加工の先進国ドイツのハンバーグ市場に学ぶ

1995.11.20 89号 6面

即席ハンバーグ(レトルト、チルド、冷凍)は、わが国独自の食品として開発し、国民の食生活に定着してきた。食生活はますます洋風化が進んでおり、即席ハンバーグは今後もコンビニエンス・フードとして、需要の増大が予想される。欧米では肉類を大量に消費し、食肉加工品も多く開発されている。そこで、今後予想されるわが国の即席ハンバーグなどの需要増加に対応できるように、特にドイツのハンバーグ市場にスポットをあて、日本貿易振興会ハンブルグ・センターが実態を調査した(九四年9~12月)。

まずドイツの食肉の消費量について見てみると、この数年間、一人当たりの年間食肉消費量は着実に低下している。

一九八八年以降一人当たりの食肉消費量は絶えず減少し続け、九四年には一人当たり六〇・五キログラムと八八年に比べ一三%減少している(表1)。

次に食肉の消費動向について見てみると、一人当たりの食肉消費量は着実に減少している。

その主な要因は二点あり、一つは食肉業界の相次ぐスキャンダルを通じて、消費者も食肉関係の諸問題を認識するようになった。

子牛へのホルモン剤投与事件、残酷な家畜輸送や不衛生などと畜場に関する報道に次いで、「牛肉の狂犬病(BSE)」を巡る一連の事件の報道で、食肉に対する消費者の信頼を打ち砕き、食肉産業に打撃を与え、食肉市場を一段と不安定にさせた。

もうひとつの要因としては、消費者側の栄養に対する認識の変化で、肉を食べなくても、健康で正常な生活が送れることを知った消費者たちは、もはや食肉に依存しなくなってきている。

挽き肉製品は、消費者層別に特定の好みがあるようだ。

青少年世代に人気がある挽き肉製品は、ハンバーガーと別の形にした類似製品だ。若年層がこうした嗜好に傾き、ハンバーガーが大いに好まれるのは、ドイツ国内でファストフード(FF)店が増え、国内各地にアメリカ文化の影響が浸透しているためだといえる。FF店最大の消費層でもある若い消費者間で、とりわけハンバーガーのイメージが高まってきている。

若い消費者が好んで食べるもうひとつの挽き肉製品は、中南米や地中海のあらゆる挽き肉料理で、メキシコのブリトーやエンチラーダ、チリ・コン・カルネ、スパゲティ・ポロネーズなど。これらの料理は若者間でますます人気を得ている。主な理由は、低価格、簡素な調理法、栄養価が高いこと、普通の挽き肉料理に楽しい変化をつけられるという四点にある。

これに対し、大人に好まれる挽き肉製品は、ビーフステーキ、ミートボール、ミートローフなど主として伝統的なものだ。人気の理由は、伝統的な挽き肉料理の味と外観に慣れ親しんできたことや、若年層に比べ他の製品に変えることへの抵抗感だ。

あらゆる階層に共通する最近の傾向は、質の落ちた挽き肉を食べる恐れがあるという消費者の危惧感から、挽き肉の消費量が夏場に低下すること。

ドイツのFF産業の概況(表2)を見てみると、九二年の総売上高は、前年対比一二・五%増の三五億に達し、実質伸び率は八%だった。ドイツでは過去五年間に、FF・レストランの総売上高が飛躍的に伸びている。

一方、店舗数をみると、八八年の一二四七店から九二年の一四六三店へあまり増えていない。

同産業は五四%とマクドナルドを筆頭とするバーガーチェーンが占めている。同社は店舗数と売上高の両面で市場最大。

同社以外にドイツで営業している大手ハンバーガー・チェーンは、市場占有率八・八%のバーガーキングだけ。

売上高第二位は、市場占有率九・五%のノルドゼー社。同社は伝統的に、魚介類の販売を専業としているが、ハンバーガーチェーン店も経営し、伝統的なバーガー・レストランを脅かす競争力もつけてきた。

業界筋では、FF・レストランは数年前に比べ顧客の利用回数が増えているという。しかも、顧客のほぼ半数は出費も増やしている。

年齢別に見ると、FFの平均的消費者は一四~三四歳と幅広い。

近年、FF市場は一ランク上の製品に移る傾向を見せている。ダブル・バーガーやトッピングを増やした付加価値製品に極めて人気がある。より健康的な製品へと消費者の嗜好が移行するに伴って、チキンやいろいろな種類のサラダもバーガー業者のメニューに載るようになってきた。

環境保護意識とパッケージ廃棄物の処分を巡る問題が何年も前から国民の優先課題となっているが、こうした傾向がFF業者にもさまざまな影響を及ぼしている。現在最も好まれるパッケージは、リサイクル紙利用の包装だ。

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