’96業態別展望 ファミリーレストラン=苦難は続く/差別化で新風を
全方位型に陰り
ファミリーレストランでは、今年もし烈なつぶし合いが続くだろう。この分野は大手企業同士の戦いで、この戦いの根本にはそれほど大きくないマーケットに規模の大きな企業が参入しすぎ、数年前から既にオーバーストアの状況になっていることがあげられる。このような場合、力のないところが淘汰されある程度落ち着いていくものだが、いま残っているところはそこそこの力がありなかなか土俵を降りないため、今年も苦しい戦いが続くだろう。
業種別に見てみると、中華はバーミヤンの一人勝ちであり、バーミヤンのコピー(もしできればだが)はまだ出店のチャンスはある。和食は夢庵の不振、さとの好調が報じられているが、まだまだ出店の余地はある。洋食もここにきて方向が見えてきた。一時全盛を極めた和・洋・中の全方位型FRは駄目になってきており、商品を絞り込んだFRが比較的好調になっている。イタリアンに特化したサイゼリヤ、スカイラークガーデンズなどだ。FRも価格帯で三分割できる。ガスト、サイゼリヤ、びっくりドンキーなどのディスカウント型、デニーズ、ロイヤルホストなどの従来価格型、スカイラークガーデンズなどの高価格型である。九四年から九五年にかけてディスカウント型が脚光を浴びたが、今はそれぞれの分野で売上げを回復しているところが出てきた。
生き残りかけて
従来価格型のロイヤルホストは、料理の方向として本格的な料理で差別化を図ってきているし、デニーズも、初期のコンセプトのウエストコーストのイメージで、ヤングをターゲットとしてとらえ直し始めたようだ。
今までのFRは他で成功したところの真似を単純に繰り返してそれでもそこそこの売上げが取れていたが、これからは難しい。独自のコンセプト(お客様から見てはっきり分かる)を磨き上げたところだけが生き残ってくるだろう。
今FRのマーケットが郊外型居酒屋に侵食されつつある。都心がオーバーストアで郊外に伸びてきた居酒屋に、二〇代、三〇代のファミリーが週末行くようになっている。FF、FRの外食に小さいころから慣れている女性、子供にとって、居酒屋は新しい冒険であり、いろんなものをすこしずつまさにお子様ランチ的に食べられる新しい店である。居酒屋がFRの競合店として名乗りを上げたということだ。
経費削減が焦点
限られたパイを巡っての大手同士のつぶし合いが起きるだろうが、目を転じれば中華・和食では有力なコンセプトはなく、また居酒屋の逆で、都心部でのFRの出店はあまりない。既存店舗での大幅な売上げの増はもう期待できないだろう。無駄な経費の削減、特に原材料のスケールメリットによる削減が経営上のポイントとなるだろう。どちらにしても、長い厳しい道はまだ続いている。