惣菜弁当の殿堂(8)主婦の店 さいち「煮物」 厨房は煮物に始まり煮物に終わる

2013.04.01 409号 09面
「煮物(五目煮)927g/750円」 竹輪、さつま揚げ、タケノコ、ゆで卵、フキ、昆布、ホタテ、大根、白滝、コンニャク、ニンジン、洋からし3個

「煮物(五目煮)927g/750円」 竹輪、さつま揚げ、タケノコ、ゆで卵、フキ、昆布、ホタテ、大根、白滝、コンニャク、ニンジン、洋からし3個

家族経営で家庭料理の代行を担う佐藤啓二社長と澄子専務

家族経営で家庭料理の代行を担う佐藤啓二社長と澄子専務

 仙台市太白区(旧・秋保町)の周辺人口約4700人の温泉街に“秋保のおはぎ”で名をはせる伝説の食品スーパー「主婦の店さいち」がある。店舗面積わずか約80坪の個人店ながら、おはぎの日販は最高2万5000個以上(平日平均5000個)にも達し、多くのメディアで紹介されている。だが、それに匹敵して、地元客、業界筋から絶賛されているのが「煮物」だ。惣菜の中核として、弁当の副菜として、おはぎ以上に欠かせない位置付けにある。この煮物を軸に展開する厨房で研修を受けた食品スーパー(惣菜担当者)は500社以上。厨房を取り仕切る佐藤啓二.社長・澄子専務は、学びに来る者を温かく迎え、市場に貢献している。

 ●商品発祥:食品スーパー惣菜の草分け

 1960年、当時25歳の佐藤啓二氏(現社長)が家業「佐市商店」4代目を継ぎ、79年、食品スーパー「主婦の店さいち」を創業。お客の「おはぎが食べたい」の声をきっかけに81年、おはぎ・惣菜弁当の製造・販売を本格化。「おはぎ」「煮物」を中心に多くの名物商品を生み出した。以降、中食市場の活性化にともない「惣菜弁当の手本」として注目され、全国の食品スーパーから多くの研修者が訪れている。

 ●調理概要:味見よりも体感が大切

 便われる素材は大根、コンニャク、ホタテなど約12種類。素材の持ち味を十分に生かすため、それぞれを単品で炊き込み、炊き上がった個々の煮物を容器に盛り合わせる。煮物作りが始まるのは毎日夜中の1時。仕込み、炊き込み、冷却、盛り合わせ作業を経て、朝6時頃、売り場に陳列される。その時間帯から弁当の盛り付けが始まり、開店10時までに弁当が陳列される。この一連作業が終日繰り返される。

 厨房を取り仕切る佐藤澄子専務は「煮物を炊くコツは、『色の見分け』と『音の聞き分け』です。火にかけて素材が少し透き通ってきたら調味料を加える。炊き込む音がブクブクからグツグツに変わったらよし。素材ごとにいろいろなコツがあり、季節によっても異なります。だから経験だけが頼りです。味見よりも体感で覚えることが大切」と言う。

 ●販売実績:弁当にも多様 副菜は主菜と同格

 「煮物の盛り合わせ」は常時6~7種類。価格も内容や量によって150~750円と細分化されている。日販は大容器の500~750円が約100~150個、150~300円の小容器が約200~250個。弁当の副菜にも煮物が多用されており、その存在感は主菜と同格だ。

 店舗全体の1日集客数は平日1000人、土・日平均1500~1800人。年商は約7億円。売上比率は惣菜弁当(おはぎを含む)65%、一般商品35%。惣菜弁当とおはぎの売上比率は4対6。

 ●ポイント:保存料無添加 昔ながらの味

 秋保町では「おはぎ=観光客」「煮物=地元客」との認識が強く、煮物への愛着が深い。その決め手は「保存料無添加」だ。おはぎ、煮物ともに消費期限は当日のみ。「昔の味」「地元の調味」「地場素材の鮮度」にこだわっている。

 佐藤啓二社長は「保存料を使うと日持ちしますが、『なぜ日持ちするの?』という違和感があります。昔は地場素材を新鮮なうちに調理して、その持ち味を味わいました。最近は利便性や価格ばかりが優先されています。でも、お年寄りを中心とする地元客の本音は、やはり『昔ながらの味を食べたい』なんですよ」と言う。

 ●店舗メモ

 「主婦の店 さいち」 所在地=仙台市太白区秋保町湯元字薬師27番地/開業=1979年/営業時間=午前9時~午後7時30分、定休=第2・第3水曜日他/敷地=450坪、店舗=約80坪、事務所・厨房・倉庫=約92坪/従業員数=社員15人、厨房従業員35人(午前2時から午後7時30分まで3交代制)

 ●食材・資材の決め手 使用食材

 正田醤油「特撰つゆ」

 汎用性抜群のロングセラー

 本醸造・濃口醤油をベースとして焼津産鰹節と利尻産昆布を使用。雑味の少ない、すっきりしたうま味が特徴。発売から35年のロングセラー商品。

 佐藤澄子専務は「香り、うま味、塩分のバランスに優れているので、初心者でも扱いやすいと思います。のびがよいので合わせ調味料のベースにも最適。うちの場合、素材のエキスやだし、日本酒と合わせ、料理別に合わせ調味料にして使っています。約30年前、この特撰つゆに出合って「惣菜弁当で勝負してみよう!」と決心したんですよ」と言う。規格=1.8ml(常温)

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