外食史に残したいロングセラー探訪(75)すき家「キムチ牛丼」

2013.05.06 410号 12面
こだわりのキムチ牛丼(380円並盛)

こだわりのキムチ牛丼(380円並盛)

ファミリー層を意識した展開は現在にも受け継がれている

ファミリー層を意識した展開は現在にも受け継がれている

 数ある牛丼店のなかで、どこよりも商品が豊富なのが「すき家」だろう。特にトッピング牛丼の数は、常に10種類近くがラインアップされているから驚きだ。今でこそトッピング牛丼は、さまざまな店舗でも展開されているが、同店の「キムチ牛丼」がその元祖といわれている。シンプルだが飽きのこないロングセラー商品、キムチ牛丼を紹介する。

 ●商品の発祥:プルコギをヒントに

 株式会社ゼンショーホールディングスが運営するすき家は1982年にオープン。当時はロードサイドを中心に店舗を出店。ファミリー層をターゲットとし、メニューでは牛丼とカレーが主力商品だった。

 キムチ牛丼の登場は97年4月。その誕生について広報室の大谷真実さんは「お客さまに新しい牛丼の食べ方を提供したい。他店との差別化なども考え商品開発をするなか、韓国料理のプルコギをヒントにしたのがきっかけだったようです。そして、トッピング牛丼の誕生でもありました」と話す。

 ●商品の特徴:発酵食品ならではの問題

 同店の牛丼は、店名からも分かるように「すき焼き」を意識した、少し甘めで濃いのが特徴。その牛丼に合わせるようにキムチも開発された。

 ポイントとなるのは、素材のカットだ。ざく切り感のあるキムチを食べやすい形、量などを考慮し試行錯誤がなされた。最も重要なのが発酵食品を扱うため、温度帯によって味が変化してしまうことだった。広報室の廣谷直也マネジャーは「工場で製造された状態でお客さまに提供するためには、冷凍ではダメ、チルドだと少し高すぎる。そこで手間はかかりますが、氷せんの状態で運ぶのがベストです。それだけデリケートな食材です。物流センターの苦労が伺えます」と話す。

 ●販売実績:常連客の信頼度が高い

 実績は販売当初から商品の豊富な現在に至るまで常に上位をキープしている。「新商品がでると順位は下がりますが、常に一定の数字を残す商品です。常連客の信頼をつかんでいるといえます」と廣谷マネジャー。

 また、今後の展開として「トッピングなどを通じてバラエティー豊かな牛丼を提案し、お客さまに楽しんでもらいたい」とさらなる商品開発に期待が膨らむコメントを述べる。

 ●企業データ

 (株)ゼンショーホールディングス/本社所在地=東京都港区港南2-48-1 JR品川イーストビル/事業内容=フードサービスチェーンの経営、販売システム・食材加工システムの開発。すき家(1915店舗)をはじめ20ブランド展開(2013年3月現在)

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