惣菜弁当の殿堂(10)多治見フランテ「円筒かき揚げ」 分厚く立体的見栄えを演出
“かき揚げ”は惣菜の大定番。それだけに単価アップや奇抜な商品開発は難しい。揚げる技術も品質に大きく反映される。そんな旧態アイテムで高級志向の差別化に成功しているのが、岐阜県多治見市の食品スーパー「多治見フランテ」の通称「円筒かき揚げ」だ。特殊金型リングを使い、円筒形に分厚く揚げたもので、立体的な見栄えが抜群。売り場を華やかに演出すると同時に、日販と単価のアップも両立させている。いまやフランテ名物の代表格だ。
●調理概要:キャノーラ・パーム・大豆の独自配合油が決め手
油調には金型の下敷きと円筒リングを使う。お玉のように取っ手の付いた下敷きに円筒リングをのせ、かき揚げのタネを入れ、160~170度Cのブレンド油で4~5分揚げる(タネにより油温と時間は異なる)。中身をフワッとさせるため、タネを詰めすぎないことがポイントだが、タネの量は普通のかき揚げより約3割多い。
ブレンド油は、あっさり軽いキャノーラ油、香ばしい風味の大豆油、カラッと揚がるパーム油を配合したオリジナル油。なによりの決め手だという。
●販売実績:季節感重視で日販5割アップ
フランテの高級志向に合わせ、「見た目のおいしさも追求」を掲げ、惣菜の差別化に着手。2009年4月、そば・うどん店の名物として見かける拳形の分厚いかき揚げをヒントに本品を商品開発した。
売価は相場の約2倍の200円。「海老のかき揚げ」と「9品目のかき揚げ」の2品でスタートし、予測通り日販70~100個で推移したが、2年後、季節商品を増やし120~200円に変更したところ、日販100~150個に跳ね上がった。現在は先発2品の通期アイテムを柱に季節商品4~5品を加えて展開している。季節商品は全20品。
●ポイント:見た目のおいしさも追求
約20品の季節商品がポイント。季節素材をかき揚げの天面にトッピングし、彩りと立体感をアピールしている。単品だと分かりづらいが、これが4~5種類、各10個ずつでも並ぶと、売り場は抜群に華やぐ。正直、高価な食材を使っているわけではないが、円筒形の頂点に添えられると、ショートケーキのイチゴのような、とってもありがたい気分にさせられる。平凡な定番商品を名物にまでブラッシュアップさせた、惣菜ならではの創意工夫といえる。
◆食材・資材の決め手:特殊金型リング
熟練あってのオリジナル型
セルクル(調理型)のような高さ約5cmの金型リング。油が直接触れるよう側面に約5mmの穴が多数ある。お玉のような下敷きにのせ、タネを入れて揚げる。中身をふっくらと揚げるには熟練が必要。同店以外では「白壁フランテ」「アルテ岡崎北」で使用・提供。
◆店舗情報
「多治見フランテ」 所在地=多治見市本町3-101/経営=(株)ヤマナカ/事業内容=名古屋を拠点に食品スーパー「ヤマナカ」など67店舗を展開。「フランテ」はアッパークラスの新業態として7店舗を展開。