外食史に残したいロングセラー探訪(80)美々卯「うどんすき」
うどんすきが誕生してから約85年。このうどんすきを考案したのが、美々卯である。実は、そば屋としてスタートした同店。大阪という土地柄、うどんもメニューに加えていった。手間を惜しまずとっただしに、彩り豊かな具材、だしを濁らせず、煮崩れしない太めのうどんが入ったうどんすきは、年間を通じた人気メニュー。今なお昔ながらの手法で作り続けている。
●商品の発祥:ヒントは締めのすき焼きうどん
うどんすきは、1928年頃、現社長・薩摩和男さんの祖父にあたる薩摩平太郎さんが考案した。牛のすき焼きを食べた後、残り汁にうどんを入れて食べたらおいしかったので、最初から、このおいしさを出せないかと考え、現在の形にまで発展させた。このようないきさつから「うどんすき」と命名。うどんすきは、同店の商標登録だ。
平太郎さんは、料理だけでなく専用鍋も考えた。うどんが小鉢にとりやすいよう工夫した浅くて広い鍋は、縁を外側に曲げることで、うどんを沿わせながら出せるようになっている。
●商品の特徴:だしと具材に手間をかける
特製鍋に、丁寧に作られただし、うどん、ハマグリ、かしわ(鶏肉)、焼き穴子、ひろうす(がんもどき)、湯葉、季節の野菜などを入れる。彩り美しい各具材は、あらかじめ湯がいたり、下味を付けたりしているため、だしを濁すこともない。春はフキやタケノコ、夏はハモ、秋にはマツタケなどを加え、四季の移ろいも楽しめる。
だしに使う削り節は、削りだめはしない。「おだしのうま味を味わってもらいたいので、毎日、翌日に使う分だけ削っています」(相談役・薩摩卯一さん)
●販売実績:年間通して一番人気
うどんすき以外にもメニューが多い同店。年間を通じて最も人気がある料理をたずねると、「やはりうどんすきですね」と、本店店長の平山さん。同社本店の場合、ランチを含めて約4割の方が注文し、年間に約2万1000食が出るという。
5年ほど前から、ランチタイムに「レディースセット」(980円)を加えた。いろいろ味わえるよう小鉢の種類を多くし、自慢のそばを付けている。「若い女性にもおいしい麺やおだしを味わってほしいですね。誇りと自信をもって努力を続けたいですし、店のもんにもそうあってほしいと思っています」と卯一さんは語る。
●企業データ
社名=(株)美々卯/本店所在地=大阪市中央区平野町4-6-18/店舗数=23店舗(うち8店舗は、(株)東京美々卯)/事業内容=飲食業(麺類料理、日本料理、天ぷら、懐石料理)。大阪・堺で200年続いた料亭「耳卯樓」から、1925年に麺類専門店の「美々卯」と改めた。