惣菜弁当の殿堂(27)煌「京風出し巻玉子のお弁当」 女性を中心に日販6000食の人気
◇極限までシンプルに、必要なものだけを 低価格かつ最良のだし巻きへの挑戦
現在、ロープライスの惣菜弁当は種類も多く、三者三様に工夫も凝らされている。そんな競合市場で突出した人気ぶりを見せているのが、惣菜製造会社「煌(きらめき)」(京都府長岡京市)の「京風出し巻玉子のお弁当」だ。シンプルさにこだわり、おかずの品数を削って「出し巻玉子」一品の特化。この大胆なコンセプトが量販店から指示され、わずか2年で日販6000食を突破した。「煌」を始め、卵焼きメーカー、量販店の3社が利益率よりも満足度を優先して協力し合い、質実剛健な商品を実現できたからこその人気ぶり、その作り手の思いに迫る。
●商品発祥:京都、錦市場から着想 だし巻きのおいしさを弁当へ
販売元の「煌」は、もともと米飯販売業者として高い炊飯技術を有している企業だ。2012年ごろから現専務の泉本哲男氏の発案で、毎日でも食べられるような弁当の商品開発に挑み、ロープライス路線でこれを目指すことに決めた。当時、ロープライスの弁当といえば、他社は298円を一つのラインにどれだけボリュームを持たせられるか、品数を増やせるかという“お得感”でしのぎを削っていた。その中で、泉本氏が京都錦市場で食べただし巻きをヒントに、あえて卵焼きとおにぎりという“シンプルさ”をコンセプトに勝負することを決めた。同じ、京都の老舗卵食品メーカー「吉田喜」にだし巻きの開発を依頼し、商品は完成。13年から大型量販店で売り出し、瞬く間に人気を獲得した。
●調理概要:京風薄味へのこだわり 砂糖不使用で素材の味を
おにぎりは「煌」が、だし巻きは「吉田喜」がそれぞれを生産。おにぎりは価格を抑えるため、普通のブレンド米を使用。これをコメ関連企業ならではの炊飯技術で、商品を届けた後に、食べるのに最適な状態になるよう調整する。だし巻きは、カツオ、イワシ、サバの3種からだしを取り、薄口醤油、本みりん、食塩などで味付け。砂糖は使わず、添加物も極力排して薄味にこだわる。このだしを卵に対して約15%の割合で混ぜ合わせ焼き上げる。最後に、だし巻き四切れ(120g)とおにぎり(80g)を二つ、付け合わせのしば漬けを容器に詰めて出荷する。
●販売実績:2年たたず店の主力に 生産上回る注文数
13年11月に販売を開始。初め、近畿80店舗ほどの量販店売り場で3日間のテスト販売を行った。300~500食ほどを用意していたがすぐに完売。800、1000食と生産を増やすたびに注文が入った。今では関西を中心に、四国も含めて端は山口県までの西日本全域の量販店で販売。全500店舗ほどで、日販6000食を売り上げる大人気商品となった。「現在、繁忙日は生産ラインが追い付かず、これ以上の増産は難しい」と営業企画部長の槇山理志氏は語る。
●ポイント:厳しい品質管理と味の両立 ギリギリを見極める巧みさ
おにぎりとだし巻きだけ、というシンプルさにもかかわらず売れ続けている大きなポイントは二つある。まず一つ目は、味と品質のバランス管理の努力にある。とことん京都らしい薄味にこだわると、素材の持ち味を壊さないように添加物を抑えなくてはならない。そうなると卵は傷みやすくなるが、徹底した品質管理で、25℃で48時間という基準をクリア。夏場は味を崩さないギリギリで焼きを強くするなど、卵のプロの細やかな努力が「安全においしく」を支えていることだ。二つ目は、品数を最低限にして値段も抑えたことで、他のサラダや飲み物を買ってもワンコインに納まること。さらに薄味のシンプルさは飽きが来ることなく、毎日の昼食のベースとして利用しやすいのが、売上げが落ちなかったことだといえる。
◆会社概要
(株)煌(きらめき) 所在地=京都府長岡京市神足芦原5番地
◆食材の決め手 愛用食材
みやまえ「ミニパック柴漬け」
しば漬けでイメージアップ 京都らしさを確かなものに
極限までシンプルにこだわった「京風出し巻玉子のお弁当」において“京風”というのは品数を増やさず付加価値を高める大切な要素だ。確かに、食べてみれば京都らしさは一口で分かるが店頭で見ただけでは、おにぎりと卵焼きという組み合わせには京都らしさは少ない。だがここに、京都のイメージカラーおよび漬物のイメージにマッチした“しば漬け”が入ることによって、途端に「京都のお弁当」らしさが生まれる。他にもパックはシックな黒色にこだわり弁当中身、ラベルは「黄、白、黒、紫という京都らしいカラーとデザインにこだわった」と開発担当の松尾幸子氏は語る。
規格=1袋 約3g