メニュートレンド:リオ五輪でブレークの予感 ブラジルの定番・郷土料理「ムケッカ」
今年8月にリオ五輪が開催される。メニューは話題性もポイントだ。このタイミングでブラジル料理を取り入れて、集客に結びつけたいと考えている店は少なくないはず。とはいうものの、「ブラジル料理って、何?」と今ひとつ、ピンとこない。炭火焼きの肉や豆料理などもあるが、特別な食材や厨房器具を使わず、居酒屋でも提供できる代表的なブラジル料理がある。それが「ムケッカ」だ。
●日本人にも親しみやすい味に
「ムケッカ」とは、ひと言で説明するなら、ブラジル版シチュー。いくつかのバリエーションがあるが、代表的なのがブラジル北部バイーア州の郷土料理として伝わっている「ムケッカ・バイーア」。バイーア州は海岸沿いに位置するので魚介を使うのが特徴で、プラス、欠かせないのがトマトとココナツミルクだ。
ブラジル料理の専門店「SAUDADE(サウダーデ)」の看板メニューのムケッカは、まずオリーブ油で刻んだニンニクを炒め、ザク切りの玉ネギ、ピーマンを加える。ここで、あえてヘラで混ぜ合わせず、そのまま弱火にして玉ネギの水分が出るのを待つ。焦げつかせないコツは、玉ネギを1人分=1個程度と多めに使用すること。玉ネギの水分が出てしんなりしてきたら、小エビ、干しダラ、トマト缶を加えて煮込む。加水しないことも特徴だ。ペースト状になるまで煮込んだら、一晩寝かせて味をなじませる。
ポルトガルの植民地だったブラジルは、食文化も当然、ポルトガルの影響を受けている。塩漬けのタラの干物は、ポルトガル料理ではおなじみの食材だ。「干しダラは戻さずに、乾燥したままで皮をはいで、手で割いて加えます。水で戻さない方が、タラのうま味が出ますから」と吉田貞仁店主。
最初、小エビを干しエビにしてみたが「干しダラも乾物なので、乾物同士で味がケンカしているような気がして」と生のエビに変更した。
注文を受けてからのオペレーションは、ペースト状になったムケッカのもとを温めて、ココナツミルクとカットしたトマトを加えて完成。これをカレーのようにライスにかけて食べる。
日本人向けにした工夫は、ブラジルではヤシ油を使用するが、それをオリーブ油にしたこと。「本場のヤシ油は精製が粗く、日本人が食べるとおなかをこわすことも。そうかといって、よく精製されたものだとヤシ油独特の風味がない。それでオリーブ油で代用しました。でもエキストラバージンなどオリーブの風味が強いものはNG。安価なオリーブ油の方がいいので、コスト的にも助かります」と吉田店主。
味付けは干しダラの塩分だけ。特別な調味料やスパイスを使わないことも、メニューに取り入れやすい。2014年のFIFAワールドカップのときは「笑いが止まらないほど店が繁盛した」とのこと。今年の夏は、ブラジル料理が集客の切り札になりそうだ。
●店舗情報
「ブラジル料理 SAUDADE(サウダーデ)」 所在地=東京都文京区湯島2-3-14 エムサ湯島1階/開業=2010年2月/営業時間=月~金 午後6時~翌午前0時(LO午後10時)、土 午後6時~10時(LO午後8時30分)、日・祝日定休/坪数・席数=9坪・14席/平均客単価=4500~5000円
●愛用資材・食材
「AROY-D ココナッツミルク」 輸入元:タイオリエント商事(東京都墨田区)
コストパフォーマンスの良さが抜群
タイ産の厳選された高品質のココナツを使用。「ムケッカ」には欠かせない味の決め手。「ココナツミルクとしてスタンダードな味で、しかも値段が手頃だから、コストパフォーマンスがいい点が気に入って愛用しています。最後に加えることで、ムケッカの味がマイルドに仕上がります」と吉田店主。
規格=400ml