飲食店の数学講座(12)悪い数字を変えるにはコツがある<11>
●ランチ客数予測せずミニサラダ、おばちゃんに百個作らせる愚か者!
顧問先の居酒屋へ、ランチタイムに訪問した。洗い場のおばちゃんに「元気でやっていますか?」と声を掛けた。ふと手元を見ると、ランチに使うミニサラダを作っている。それは構わないが–、今は午後1時半。もうランチは終わりに近い–。それに冷蔵庫には、まだミニサラダが残っている。
おばちゃんに聞いた。
「これからランチの団体客でも入るの?」
「先生、サラダは毎日、この棚いっぱい作っておくのヨ!」
棚の奥にあるサラダを一つ試食した。レタスのシャキシャキ感が無く、ドレッシングが染み込んでまずい。数を数えると在庫が百個ある。ロスになるが、まずい物を出してはならない。すぐに捨てさせた。
当店のランチ客数は60~70人。ランチは近隣の固定客が多い。雪など降れば50人、近くの会館でコンサートや催しものがあれば80人。そのくらいの変動で推移している。ランチサラダも、特別なことがない限り、80個以内で間に合う–はずだ。
ランチが終わって、若い責任者を呼んだ。以前、ランチサラダが切れて苦労した–。だからおばちゃんに、冷蔵庫いっぱい作ってくれと指示しているという。責任者Q君は、メモをしながら私の話を熱心に聞いた。
まず、仕事をするうえで大切なことは「予測」すること。特に、その時間を任せられているリーダーは、予測を誤るとお客さまに大きな迷惑を掛ける。予測を立てるには、データを分析することだ。多少面倒くさいが、昨年から昨日までのPCデータを開き、ランチの客数、客単価の推移を調べること。そして傾向値を覚える。
ランチは、最低で50人、最大80人。通常なら60~70人。天気や、競合店などもチェックして、ランチの「予測」をする。そこで「仮説」を立てる。“今日のランチは、75人と予測し、サーモンフライ75人分、ミニサラダ、ポテサラ、そのほか75人前で準備する”。それを朝礼などで皆に知らせ徹底する。
12時45分くらいに在庫を確認、追加が必要かを判断し指示する。そして、ランチタイム終了後、実績を見比べて、当初の予測が正しかったのか、どうして外れたのかを「検証」する。そしてまた、明日のランチタイムの予測をする。これを繰り返し、徐々に予測力は向上してゆく。
店の経営は、この「予測」「実践」「検証」の繰り返しなのだ。専門用語で、PDCサイクルというンだよ–と教えた。
「先生の言う意味が、やっと分かりました!明日からやってみます!」。責任者Q君の力強い返事に、「頼むぞ!」と期待を込めて熱い握手を返した。
(ドクター・マヒマテック)