アポなし!新業態チェック(108)ニューディッシュ ムース デリ&カフェ

2016.05.02 446号 12面

 ●日清医療食品のアンテナ店舗、トランジットジェネラルオフィスがプロデュース

 昨年12月、医療・福祉施設などに向けた給食サービス事業の最大手である日清医療食品が、東京・銀座にアンテナショップ&レストラン「ニューディッシュ ムース デリ&カフェ」をオープンした。

 同店のプロデュースと運営を手掛けるのは、話題の店舗を次々と送り出しているトランジットジェネラルオフィス。日本初の「“ムース”デリ&カフェ」というスタイルで、“予約が取れないフレンチ”として知られる「レストランOGINO」の荻野伸也シェフがメニューを監修している。

 メニューのテーマとなっている「ムース食」とは、高齢者向けに同社が提供し医療・介護施設などで活用されている咀嚼、嚥下がしやすい料理のこと。介護食にありがちなミキサーで液体状にした食事ではなく、固形物としての形があり、見た目や味も楽しめるという料理だ。ソースやパイの具材などに「ムース食」を取り入れ、ヘルシーでありながら効率良く栄養を取ることができるメニューとして提供。シェフがアレンジした「ムース食」のほか、デリスタイルの料理も用意する。ランチの「ランチデリプレート」(1,200円)は、主食1品、複数のデリから選ぶ温菜と冷菜が各2品、そしてドリンクが付き、テークアウトもできる。ディナーメニューでは、「ポークリエット」(800円)や「パテ・ド・カンパーニュ」(1,200円)など、荻野シェフ自慢のシャルキュトリーも提供される。「チョコレートムースと木苺のソルベのパフェ コーヒー風味」(800円)のようなデザートも取り揃え、ドリンクは「コーヒー」(700円)のほかアルコール類もある。

 ★けんじの評価 メニュー監修は荻野伸也シェフ

 「ビルズ」や「マックスブレナー」をはじめとして、数々のヒット店舗を生み出して来たトランジットジェネラルオフィスが、今回は医療や福祉分野の食に関するリーディング企業と組んで、また新たなスタイルの店舗を出店した。

 同店が位置しているのは銀座三越の裏手、中央通りと昭和通りの間にある、晴海通りからすぐのビル1階だ。ショッピングなどで外部から銀座を訪れるだけの人にとってはあまり立ち寄らない一角かもしれないが、銀座の中心であることには間違いない。この店がヒットすれば、周辺にも人波が押し寄せることだろう。

 銀座というのは不思議な街だ。目抜き通りには世界に名だたるブランドショップが林立しているにもかかわらず、路地裏でひっそりと昔ながらの営業を続ける小さな店もまだ存在しているし、コンビニや弁当店、ラーメン店なども多い。狭いエリアの中で、これだけ落差の激しい店舗が多数共存している街は銀座ぐらいのものなのではないか。日常と非日常が共生する街と言ってもよいだろう。また、それが銀座の銀座たるゆえんなのかもしれない。銀座は繁華街というだけではなくオフィス街という側面もあり、就業人口もかなり多い。そうした人たちのための普段遣いの店が、この落差を生み出しているように思える。銀座といえども、働く人たちの大多数は大衆向けチェーンを利用する庶民なのだ。

 ところで、開業時のプロモーションの上手さには定評のある同社だが、食べログのコメント欄がオープニングのレセプションに招かれた人たちで埋め尽くされているというのは果たして効果があるのだろうか。

 (外食ジャーナリスト 鷲見けんじ)

 ●鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。

 ●店舗情報

 「ニューディッシュ ムース デリ&カフェ」 開業=2015年12月17日/所在地=東京都中央区銀座4-8-4 三原ビル1階

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら