新春特別インタビュー:ブロンコビリー・竹市克弘社長 ブロンコビリーは「ご馳走レストラン」

2018.01.01 467号 17面
竹市克弘社長

竹市克弘社長

ステーキ・ハンバーグの「ブロンコビリー」店舗外観

ステーキ・ハンバーグの「ブロンコビリー」店舗外観

 名古屋発祥の大手外食企業の中で近年、熱い視線を浴びているのがステーキハウス「ブロンコビリー」だ。約40年前に創業した同社がなぜここにきて注目されるのか。それは12期連続12%以上という高い経常利益率を誇り、特に2011年から外食業界の中で常に3位以内を維持しているためだ。しかし、同社はローコスト、低価格を前面に打ち出す企業ではない。むしろ、その対極にある「ご馳走レストラン」だ。炭焼きステーキ・ハンバーグはもちろん、季節感に応じたサラダバーが消費者の心をがっちりとつかんでいる。専門店としてのこだわりがここにきてさらに支持されているのだ。今回、竹市克弘社長に話を聞き、ブロンコビリーの強さの秘密を探った。(横山卓司)

 ◆経常利益率12期連続12%以上 専門店のこだわり、さらに高レベルへ

 –外食産業を取り巻く環境については。

 竹市 直近の1、2年は中部地区に限らず、全国的に景気に対し非常に敏感になっていると思います。財布のひもが固くなるということは、生活防衛に入るということ。消費マインドの落ち込みは新しい店に行こうという意欲を失わせます。

 同業他社との競争は一段落した感がありますが、ここ1年はお客さまが分散し、当社はもちろん、他社さんも厳しかったと思います。現在、外食に求められているのは専門性と利便性だと思います。加えて、業績が良いのはコストパフォーマンスの高い店です。

 「ブロンコビリー」は専門性が高い店ですが、お客さまが支払うコストの面ではやや厳しく見られていますし、利便性についても特に便利な場所にある訳ではありません。これからは入店する理由付けがさらに必要になってくるでしょう。

 –熾烈な競争の中で貴社がやるべきこととは。

 竹市 私は、もはや外食とか中食とかというくくりの中で考えるのではなく、お客さまのライフスタイルの中で「ブロンコビリー」は何を実現できるのかを一番に考えたいです。シンプルなことですが、どんな価値を訴求しているのかが大事です。それは外食の中でということではなく、食を提供するあらゆる企業に言えることだと思います。

 当社はお客さまに作りたてのものを提供しています。単純に作りたてということではなく、専門店として、作り立てでこだわった商品を届け続けたいと考えています。お客さまに「ここまでやってくれるなら、また来ようかな」と思ってもらえるレベルにどこまで引き上げられるかが、われわれの一番の課題で、それを実現していくことが専門店としての責務だと考えています。

 –貴社の状況については。

 竹市 直近の7期連続で増収増益を達成しています。今期(17年12月期)は若干減益になるかもしれません。もう一度、売上高だけではなく、経営体質を見直していくことが来期にかけての課題です。

 現在、117店舗を展開し、関東に41店、関西に10店、残りの66店舗が名古屋を中心とする東海にあります。出店は毎年15店舗を目標にしています。ここ3年ぐらいは平均して12~13店舗を出店していますが、重点的に出店しているのは関東で、次に関西です。これからの出店構成比はだいたい関東5対関西4対東海1で、関東、関西はまだまだ出店できる余地があります。東海は出店する場所が限られていますが、残っている場所は採算が見込めるため、手堅く出店していく方針です。

 何といっても、個店を強くすることが大事です。メニュー開発と品質向上に関しては日々磨きをかけているので問題ないですが、「店舗(人員)の若年化」が進んでいるのが気になります。社歴の短い社員がどんどん増え、技術不足になる心配があるので、現在、勉強会、研修会を通じてテコ入れを行っています。また、店ごとにもっと目標を明確にして、働いている全員がそれに向かって参画する風土も作っていきたいと思います。

 –今後の方針は。

 竹市 出店すると業績が厳しくなりがちですが、それでも採算にこだわる姿勢は変わりません。今年は若干厳しいが、ここ数年にわたり何とか死守してきました。ただ、売上げを保つことはできていましたが、そのワンランク上の「売上げを上げる」というところまで会社を引き上げていきたいです。

 当社は業界内の競合他社の状況はあまり調査していません。それよりも、お客さまの満足度を追求することで、従業員も自分の職場への誇りが持てると思います。世の中がどのように変わろうと、お客さまのニーズに応え続けていきます。

 ◆炭火焼がんこハンバーグ 10年ぶりにメニュー改定

 「炭火焼がんこハンバーグ」のレシピがこのほど、38週に及ぶ商品研究会を経て、10年ぶりに大幅改定された。

 今回から焼肉屋でいう上カルビ相当の牛肉を使用するなど、肉の選定からこだわった。それから、肉の食感をしっかりと感じてもらえるよう、細挽きと粗挽きの大きさや混合率を変えて試作。最終的に粗挽きの径を2倍にし、約半年間、毎週1回、10レシピの試作を重ねてやっとの思いで作り上げた。しかし、満席時を想定して、実店舗での調理さながらの状態で焼いてみると、網の上がハンバーグの脂により大炎上。再度、配合やオペレーションを見直して、総試作数150以上のレシピからようやく「極み炭焼きがんこハンバーグ」が誕生した。

 現在、店内でハンバーグでは珍しく、肉のうまみを感じてもらえるよう、自慢の自家製ソースではなく、岩塩で食べることを勧めている。来店客からの評判は上々だ。

 ◆安全・おいしさを支える仕組み

 ●自社工場

 より安全な肉を提供するため、店舗で使用する肉は自社工場で製造している。まず、塊肉を熟練の技で部位別にカット。肉の職人顔負けの技とスピードで、食材を無駄なく使用するなど最大限活用。不要部分はわずか2%程度。経常利益率上位の秘訣がここにある。

 果物や野菜などは大量に手作業でカットし、オリジナルのステーキソースを自社工場で作っている。毎日出荷するため、保存料が要らず、雑味のないおいしさに仕上がる。

 安心しておいしい肉を食べてもらうため、最先端の技術が搭載された機材を使用。高い技術で丁寧にカットされたステーキは、すぐに真空パックされ、チルドのまま毎朝全店に配送される。

 ●店舗

 自社工場から届いた肉は、炭火でおいしく焼き上げる。サラダバーの野菜は、提供前にカットすることでシャキシャキな鮮度を保ったまま来店客に届ける。ホールスタッフは独自の温かい接客スタイルでもてなす。スタッフ全員がこだわりを持って働いている。

 ●商品開発会議

 同社では毎月、商品を見直している。何度も会議や試作試食を重ね、新商品が誕生している。

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