惣菜弁当研究所:ローカル名物紀行 さくら「たまご巻き寿司」 皿鉢料理から独立した人気者

2019.01.07 479号 15面
たまご巻き寿司 税込み480円/417g

たまご巻き寿司 税込み480円/417g

 ◆人口3000人弱の町に目当て客が続々 地元に愛され続ける郷土太巻き

 高知県では卵焼きを尊重した寿司商品が目立つ。理由は郷土料理の「皿鉢(さわち)料理」にあるといわれる。皿鉢料理は、カツオやサバなどの魚介をメインに、太巻き3品(卵巻き・昆布巻き・海苔巻き)を添えるのが定番。中でも老若男女を問わず親しまれたのが「卵巻き」。つまり皿鉢料理の人気者が独立して商品化されたと考えられる。その典型が寿司レストラン「さくら」の「たまご巻き寿司」だ。

 ●発祥と普及:作り続けて半世紀以上

 1877年「山郷旅館」創業。1950年、皿鉢料理の仕出し販売を兼務。78年、安芸スーパー田野店に持ち帰り寿司店「さくら寿司」をテナント出店。2000年、スーパー閉店に伴い田野駅前に寿司レストラン「さくら」を出店。以降、店舗営業の他、向かいの田野駅に併設する物産店で寿司商品を販売。「たまご巻き寿司」の製造は、仕出しを始めたころから続いており、66年に婿入りした4代目の山郷祥一店主は、半世紀以上、本品を作り続けている。昨今は、本品を手本にしたと思われる他店の類似商品が現れている。

 ●調理概要:焼き鍋七つを同時に操る

 卵焼き、椎茸煮、干瓢煮を芯にして、酢飯と卵焼きで巻き上げる。巻き上げる卵焼きは厚さ約5mm。18cm角の焼き鍋を使い、1回返しで焼き上げる。1回1枚が1食(1本9切れ)分となり、卵の使用量は卵40個に対し卵焼き16~17枚。焼き時間は、表裏で各7~8分の約15分。焼き方1人が焼き鍋七つを同時に操り、朝3時ごろから焼き続ける。焼成技術うんぬんよりも体力を維持するのが大変だという。

 ●販売概況:数量限定で昼すぎ完売

 人気双璧である「たまご巻き寿司」と「たまご巻きセット」の日販は、いずれも平日80~100食、土日祝日は約150食。土日祝日は、目当てに訪れる遠方客が多く、作れば作るだけ売れるが、人手が足りないため、数量限定で提供し、昼すぎには完売。物産店に観光バスが止まると、ガイドから聞いた客の購入で、昼前に売り切れてしまう。量販店から卸売の要望も多いが、現在は手一杯のため、取りに来るという条件で「サンシャイン安芸店」だけに1日50食ほど卸している。

 ●ポイント:全国拡大のポテンシャル

 地元のシャリに不可欠とされるユズ果汁と相性の良い軟質の北陸産コシヒカリを使用。コメの使用量は、1合で約2食(2本18切れ)分。海苔巻きの約4分の3だという。食べてみると、大きさに比べて思った以上に軽く、小腹を満たす軽食に好適。食べ飽きず、多すぎず、手間はかけても複雑ではない素朴な味わいは、全国拡大のポテンシャルをはらんでいる。

 ●「たまご巻き寿司」税込み480円/417g

 日販:平日・130~160食 土・日・祝日・約220食

 ※店向かいの物産店「田野駅屋」で販売

 ●店舗概要

 「さくら」

 経営:(有)山郷

 店舗所在地:高知県安芸郡田野町1428

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