食物販から学ぶメニュー開発のヒント:ヤオコー各店「あずき香る粒あんおはぎ」
●繁盛店から学んだ味を守るために社内資格制を導入
考えてみると、おはぎというのは不思議な食べ物だ。そもそも料理なのか、それともお菓子なのか分からない。法要などの特別な日に食べるごちそうのようにも、おにぎりのような携帯食にも思える。粒あんとこしあんは、どちらが正統なのか。そして、おはぎとぼたもちは同じなのか違うのかなど、疑問は多々あり、考えだすと夜も眠れない。ネットで調べてみても諸説あるようなので考えることは諦めたが、いずれにしても、おはぎが私たち日本人の食生活に深く入り込んでいることは間違いないだろう。そんなことに悩むまでもなく、私たちはおはぎを食べるのだ。
今回取り上げるのは、食品スーパー「ヤオコー」のおはぎだ。すでにかなり有名な商品なので知っている人も多いに違いない。このおはぎは、宮城県秋保温泉にある繁盛スーパー「主婦の店 さいち」から製法を学んだ特別なおはぎなのだ。同店は小さなローカルスーパーだが、おはぎを1日7000個以上も売るという。その店から正式に味を伝授された「ヤオコー」のおはぎは、十数年にわたるロングセラー商品であり、同社には、おはぎを握るための社内資格試験があるのだそうだ。
外食業界の人たちの多くは、食品スーパーを競合とは見ていないかもしれない。仕入れた食品をいかに安く売るかという商売の食品スーパーとは異なると考えているのだろう。しかし、私たちが毎日食べる“食”をビジネスにしているという点では、どちらも同じだ。近年の食品スーパーは、ただ値段の安い商品ばかりを売っているわけではない。ほぼ同一のフォーマットで競い合う食品スーパーは、並々ならぬ努力と工夫を続けている。1円単位の価格設定で、月商数億円を売る食品スーパーを侮ってはいけないのだ。
(入江直之)
編集協力:株式会社イートワークス(http://www.eatworks.com/)
●店舗情報
「ヤオコー」各店 所在地=関東