アポなし!新業態チェック(147)「プリンチ」代官山T-SITE

2019.11.04 489号 11面

 ●スタバ提携のイタリアンベーカリー ランチや酒類なども提供する幅広い商品

 スターバックスが今年2月、東京・中目黒に開業した旗艦店「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」内で人気を集めていたイタリアンベーカリー「プリンチ」が単独店舗の1号店を出店した。東京・代官山にある商業施設「代官山TーSITE」にオープンした今回の店舗は、スターバックスとプリンチが共同で出店したもの。米国内でも単独店舗がある。

 代官山店は、オープンキッチンを背景に大きなガラスケースの陳列台がある対面販売のベーカリー。店内の壁面に沿ってイートインのカウンター客席があるほか、店外のテラス席でも飲食が可能だ。

 同店で販売する商品は、ハード系のパンなどのほか、フォカッチャのピッツァやドルチェ、スープやサラダなどを含む朝・昼の軽食、アペリティーボと呼ばれる軽い酒のつまみなど幅広い。商品のレシピは80種類以上もあるという。人気の「コルネッティ」(270円~)は、プレーンなものからクリームなどを詰めたものまで5種類あるイタリアのクロワッサン。生クリームを詰めたシュー生地にチョコレートソースをかけたデザート「ビニョラータ アル チョコラート」(480円)は同店限定メニューだ。ドリンク類は、同店用にブレンドされたコーヒーのほか、ワインやビール(700円~)、「カンパリ」など。

 「プリンチ」は1980年代にミラノで創業。創業者のロッコ・プリンチ氏が手掛ける店舗がミラノとロンドンにあり、スターバックスとの提携で世界各地に出店している。(*価格は税抜き)

 ★けんじの評価 ベーカリーの新たな市場を拡大できるか

 かなり久しぶりに「代官山TーSITE」を訪れた。カルチュア・コンビニエンス・クラブが2011年に開業した商業施設ブランド「TーSITE」の1号店だ。「蔦屋書店」を核テナントとして10店舗ほどのサブテナントが入居しているが、コンビニやクリニック、ペットショップなど、近隣住民向けの業態が多い。今回、「プリンチ」が出店したのは、今年3月に閉店したカメラ店「北村写真機店」のあった区画だ。

 スターバックス コーヒー ジャパンは、1995年にサザビー(現サザビーリーグ)と米スターバックスが合弁で設立。14年にサザビーリーグが同社の全株式を米スターバックスに売却し、同社は米本社の子会社となった。実は、売却後に店舗の運営がどのように変わるかと少し注目していたのだが、ここ最近は、以前よりも店舗スタッフのホスピタリティーが向上している店が多いように感じる。もちろん地域や店舗によって差はあるだろうが、他の多くの外食チェーンに比べて、スタバの従業員は積極的に来店客に話しかける。実際、筆者がしばしば利用するある店舗では、早朝から、おそらく毎日のように来店しているのであろうシニア客が数多くいる。彼らは皆、店のスタッフと会話できることを楽しみにしているようだ。アルバイトの時給などが他のチェーンと大きく違っているはずもなく、これは主に同社のブランド運営方針や社風によるものなのだろう。

 「プリンチ」は、商品のクオリティーがとても高いベーカリーだ。これにスターバックスのホスピタリティーが加わったら、競合他社にとって大きな脅威となるかもしれない。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ●店舗情報

 「プリンチ」代官山T-SITE

 開業=2019年7月24日/所在地=東京都渋谷区猿楽町16ー15 代官山TーSITE N4棟

 ◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 編集協力:株式会社イートワークス(http://www.eatworks.com/)

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