マッチで偲ぶ外食史:ストロベリーファーム 一つの時代をつくりあげた飲食店ブランドの記憶
●東京ローカルで一つの時代をつくりあげた飲食店ブランドの記憶
「ストロベリーファーム」は、1980年代に東京を中心として複数の店舗を展開し、若い世代に人気を集めたカジュアルレストランだ。経営していたのは益栄という外食企業だが、今はもう存在していない。
同社の創業は1960年代の半ば。創業から数年後にオープンした青山の「ココ・パームス」というレストランがヒットし、以後、青山をはじめ六本木や赤坂などに次々とレストランやナイトクラブなどを出店する。中でも、70年代の半ばに六本木に登場した「エスト」は人気店として有名で、田中康夫氏が80年に発表した小説『なんとなくクリスタル』に注釈付きで登場したほどだ。
80年代に入り、米国風のカジュアルレストラン「ストロベリーファーム」を新宿に出店。その後、同社はこの「ストロベリーファーム」ブランドの展開が中心となった。ファミリーレストランの郊外店舗が外食の主流になる中で、調布市の甲州街道(国道20号線)沿いに「ベルエアガーデン」という大型店舗を出店し大成功を収める。「ストロベリーファーム」のほか、モダンな焼肉店や地中海料理、自家製ケーキの直販工場などを一つの建物に複合した、当時としては画期的な業態だ。フランチャイズ出店も行い、最盛期には約20店舗を擁した同社だが、バブルの終焉(しゅうえん)と前後してその幕を閉じた。
現在ならばM&Aなどにより、そのブランドや店舗が継承されたかもしれないいくつかのビッグネーム店も、今はもう時代の記憶の中に残るのみだ。
(イートワークス代表 入江直之)
※(マッチは吉祥寺店のもの)マッチは筆者のコレクションです。
編集協力:株式会社イートワークス(http://www.eatworks.com/)