アポなし!新業態チェック(157)「ヤ クン カヤトースト」新宿住友ビル店

2020.09.07 499号 12面

 ●シンガポールの有名店「ヤ クン」上陸 名物料理「カヤトースト」やコーヒー「コピ」など

 シンガポールの名物料理として知られるカヤトースト。そのカヤトーストの老舗である「ヤ クン カヤ トースト」が7月、東京・新宿に上陸した。同ブランドの創業は1944年。もともとは個人店としてスタートしたが、現在はアジア各地にも出店し、シンガポール国内外で100店舗を超えるという。アジアを旅する日本人にもよく知られた有名店だ。

 今回、同店を日本で出店したのは、首都圏を中心に居酒屋や肉系業態など多ブランドを展開するKIDS HOLDINGS。同社は2005年の創業だが、小規模飲食店の独立開業支援など、さまざまな手法で店舗数を増やし急速に規模を拡大している。

 今回の同店は、カウンター販売のセルフサービス方式だ。いわゆるファストフードのスタイルだが、メニューは比較的幅広い。メインメニューは「カヤトースト・バター」(340円)や「蒸しパン」「フレンチトースト・カヤ」(各390円)など。これらは150円ほどの追加で、トーストと一緒に食べる「温玉」とドリンクをセットにすることができる。フードはほかに、シンガポールの定番肉料理である「シンガポール チキンライス」(900円/ハーフ500円)や「チキンラクサ」(840円)、「ブラウンラクサ」(880円)などの麺類、トーストに3種類の具材を挟んだ「トーストウィッチ」(各390円)などがある。「コピ」と呼ばれるコーヒーは、コンデンスミルクや砂糖などを加えるかどうかを選ぶことができ、ティー系ドリンクにも「ハニーレモンティー」「ジンジャーミルクティー」などのバリエーションが用意されている。(価格は税込み)

 ★けんじの評価 オフィス街でファストフード型店舗の成否は?

 カヤトーストとは、しっかりとカリカリに焼いた食パンに、ココナツミルクなどからつくるカヤジャムというペーストとバターを挟んだ、シンガポール独特のトーストサンドのことだ。使用する食材やカヤジャムのレシピによって多くのバリエーションがあり、東南アジアで好まれるコンデンスミルクなどを入れた甘いコーヒー「コピ」と一緒に食べるのが定番だ。

 今回出店した「ヤ クン カヤトースト」は、過去にも一度日本に進出している。06年にタイ料理店などを多数展開していた日本の外食企業が同ブランドと契約を交わし、東京・江東区に開業した商業施設「ららぽーと豊洲」に独立店舗として出店した。その後、同企業が運営する上層階のフードコート型店舗に移転したが、12年ごろには撤退してしまったようだ。

 当時の店舗を運営していたのは、今回とはまったく別の外食企業である。当時とは社名が変わり、おそらく資本系列も変化してしまっているだろう。当時の店舗には一度訪れたが、確かメニューも少なく、カヤトーストを食べる喫茶店のようなスタイルだったと記憶している。多くの日本人にはなじまなかったようだ。

 今回、同店を運営しているKIDS HOLDINGSは、これまで主に飲酒系の業態を中心に展開してきた。筆者の臨店時には、コロナ禍の影響であるらしく一部のフードメニューがまだスタートしていなかったようだが、都庁にも近い西新宿のオフィスビルという昼営業がメインの立地で、同店のようなファストフード業態のブランドを、同社が今後どのように運営するのか興味深い。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 ●店舗情報

 「ヤ クン カヤトースト」新宿住友ビル店

 開業=2020年7月1日/所在地=東京都新宿区西新宿2-6-1 新宿住友ビル地下1階

 編集協力:株式会社イートワークス

 http://www.eatworks.com/

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