アポなし!新業態チェック(168)「サイゼリヤ」地下鉄赤塚

2021.08.02 510号 11面

 ●サイゼリヤ、コンビニ跡地に小型店 店内で業務用食材を販売、少人数で運営の低コスト店

 去る4月初旬、サイゼリヤが東京・練馬で、コンビニエンスストアの跡地に新タイプの小型店をオープンした。幹線道路である川越街道に面したビルインの路面店だ。このエリアでは川越街道の地下を地下鉄副都心線と有楽町線が並行して走っており、同店の下には両線の地下鉄赤塚駅がある。すぐ近くには東武東上線の下赤塚駅もあり、交通の要所だ。かつて、やはり川越街道に面して同店から100mほど離れたドラッグストアの2階に、従来型の「サイゼリヤ下赤塚店」があったが2019年に撤退している。

 歩道に面して左右に料理のサンプルケースが配置された入り口を入ると、店内は1人ずつパーテーションで仕切られたカウンター席をはじめ、一人客対応を重視したレイアウト。4人席のテーブルもあるが、現在は多くがパーテーションで分割され2人席となっている。

 メニューは従来店と同じだが、この店の最大の特徴は業務用食材を販売していることだ。店内の一方の壁面に数台の大きなリーチイン冷凍庫が置かれ、その中にサイゼリヤで使用している業務用の冷凍食材が陳列されている。販売しているのは、1.5kg(約40ピース)の「辛味チキン」(2200円)、「ポップコーンシュリンプ」(500g、1500円)、12個入りの「エスカルゴ」(750円、エスカルゴ皿付き1800円)、「ティラミス クラシコ」(6人分、1760円)など。コロナ禍の中で生まれた低コスト型の新店といえるだろう。(価格はすべて税込み)

 ★けんじの評価:将来を担う店舗として可能性はあるのか

 同店について、サイゼリヤから公式なリリースは出ていない。そもそも同社は新業態などに関する公式リリースを出さないことが多いのだが、今回は開業前に報道関係者へは公開している。なぜ、わざわざ事前公開しつつ公式リリースを出さないのかは謎だ。ちなみに、そうした報道によれば同店の面積は既存店の約4割、最大3人のスタッフで運営できる店舗なのだという。

 業務用食材の販売には、やはり少し驚いた。と同時に、店舗で使用する食材をそのまま販売してしまうという手法は外食としてどうなのか、とも思う。本来、外食産業というのは、こうした専用の食材を活用しながら、それを厨房で巧みに調理加工して付加価値を付け、利用者の満足度を高めつつ店として必要な利益も確保する、というビジネスのはずだ。すでに多くの人にとって特別な秘密でないとはいえ、飲食店がこのように内情を開陳してしまうというのは、何か「身も蓋もない」という印象がぬぐえない。またそれに対して、これといって不満らしき声も聞かないということは、店舗と同じくらい顧客の側も切羽詰まっているということなのか。

 販売されている業務用の冷凍ティラミスは6人前の容量で1760円。店内のメニュー価格はティラミス1皿が300円だから6人前だと1800円になる。店内で食べるよりはほんの少しだけお得になるというわけだ。しかし、このように利幅を削ってまで、食材をそのままの形で販売するメリットは果たしてどれほどあるのだろうか。

 ◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 ●店舗情報

 「サイゼリヤ」地下鉄赤塚

 開業=2021年4月8日

 所在地=東京都練馬区田柄2-51-16

 編集協力:株式会社イートワークス

 http://www.eatworks.com/

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