海外通信 外食ビジネスの新発想(45)富裕層ターゲットのラーメン・バー 月5000万の売上げ
●キッズメニューにもヴィーガンの選択肢
アメリカにラーメンの火が付き始めたのは、十数年前のことだったろうか。そのころは大多数のアメリカ人が、ラーメンといえばインスタントラーメンしか知らなかった。当初はかなり実験的なラーメンも登場したが、今ではラーメンの認知度が高まり根付いた感がある。
さて、「陣屋ラーメンバー」は、2010年にカリフォルニアのスタジオ・シティに第1号店を開いた。ちょうどラーメンが全米に広がり始めたころだ。順調に成長を遂げ、今や、デンバー、ダラス、オーランドなどアメリカの主要都市、およびカナダのバンクーバー、カルガリーを含め、42店を展開している。
陣屋の創業者、トモ・タカハシ(高橋知憲)氏は、20年にアメリカの外食有力紙から最も影響力のあるレストランCEOの一人に選ばれている。アメリカのラーメンの主流は、こってりと濃厚な豚骨だが、陣屋でもそうなのだろうか。
アメリカ人と日本人のラーメン嗜好(しこう)の相違について尋ねてみると、「日本人はスープに関しては塩が強いものを好むが、一方、アメリカ人は塩が強いものが苦手。その代わり辛味を好む」と言う。同店のメニューには「スパイシー」と名付けられたものが多い。
チキンのチャーシュー、キクラゲ、スパイシーモヤシをのせた「スパイシー・チキンラーメン」、豚のチャーシュー、スパイシーモヤシ、キクラゲなどをのせた「豚骨スパイシー」は、マイルド、スパイシー、ホットの中から辛さを選ぶ。一方、豚のチャーシュー、キクラゲ、ネギ、卵などをのせた「プレミアム豚骨レッド」は、1度から10度の辛さ度の中から選ぶ。6度以上は1$増。自分好みの辛さを調整できる仕組みになっている。
また同店のメニューには、シェフ・スペシャルの「ヴィーガン混ぜ麺」や「ベジタブル・スープ・ラーメン」「スパイシー・クリーミー・ヴィーガンラーメン」など、ベジタリアンやヴィーガン向けのメニューアイテムが多いのも特徴だ。同店では、富裕層をターゲットにしており、そのために富裕層に多いヴィーガンを戦略的に多く取り入れているという。
陣屋ラーメンバーは、数席しかない日本のラーメン店ではなく正真正銘のレストランだ。人々は時間をかけて食事を楽しむ。ラーメンのほか、カレーやポケなどのライスもの、サラダのほか、タコ焼きや唐揚げのような小皿、さらに家族連れも入りやすいようにキッズメニューも用意している。キッズメニューにもヴィーガンの選択肢がある。
1号店はオープンから12年間、右肩上がりで月に4000万円の売上げがあるという。一番売上げの多い店舗は、月に5000万円に達するとのことだ。
●店舗情報
「陣屋ラーメンバー(Jinya Ramen Bar)」
所在地=11239 Ventura Blvd.Studio City,CA 91604