2023年11月度、外食動向調査 フードコンサルティング

2024.02.05 540号 05面

 ●24ヵ月連続前年比増収で回復基調定着

 日本フードサービス協会が発表した外食産業市場動向調査によると、2023年11月度売上げは前年同月比109.8%となり、24ヵ月連続の増加を記録。客数は前年同月比4.5%増、客単価も5.1%増と好調で、ついに24ヵ月=2年連続で前月比増を達成した。

 11月前半まで気温が高い日が続いたことや、インバウンド客の増加に秋の行楽シーズンが本格化したことで、前月に続いてファミリー層の利用が増えたことによる客数増に加え、値上げの浸透も客単価にはプラスとなり、多くの業態で増収につながった。

 一方、ファストフードのうち、ハンバーガー3社はいずれも客数が前年割れとなり、特に日本KFC(ケンタッキーフライドチキン)は、9~11月の客数が前年比で105.1%→91.7%→90.7%と、ここ2ヵ月で急減していることが気になる。ちなみに、牛丼チェーン3社(吉野家、松屋、すき家)は、いずれも客数、客単価とも前年比プラスとなっている。

 ●2023年の外食M&A振り返る

 世界的にコロナ禍が落ち着きを見せた昨年(2022年)より、外食業界でもM&Aが再び増加傾向に転じている。23年の外食M&Aは、取引金額が約2342億円、実行件数は23件となり、前年比では取引金額は約3.8倍(2022年は617億円)、件数も23年は23件となり、22年の19件を上回った。

 22年に実施されたM&Aでは、外食企業が同業を買収するケースや、伸び悩んでいた自社業態を売却する案件が目立った。これに対して、23年に実施されたM&Aの特徴は、

 (1)前年に続き経営体質強化や親会社の経営不振を原因とした業態売却

 (2)縮小を続ける国内市場から、成長著しい海外市場を強化する「In-out型」と呼ばれる日本企業が海外企業を買収するM&Aが増加

 (3)事業シナジーや事業構造の多角化を目指す異業種による大型の買収案件

 –などが成約したほか、コスト高の直撃を受け不振が続く給食事業のM&Aも目立った。

 (1)については、焼肉坂井ホールディングス(東証STD)の宅配ピザ子会社だった「テンフォー」が、ベーカリーチェーンを運営するコイサンズに売却した案件(1月)や、投資会社で中国系資本のアジア開発キャピタルが、日本食レストラン事業の中国子会社「臻萃本物」を関係者に譲渡した案件(3月)、ゼンショーがハンバーガー業界3位のロッテリアを買収した案件(4月)、東海地方を中心に居酒屋チェーンを展開するジェイグループホールディングス(東証GRT)が、スペインの飲食子会社「KAKEHASHI」を地元経営者に譲渡した案件(6月)などが目立った。

 (2)は、ゼンショーによる北米・英国で持ち帰りずし店を展開する「スノーフォックス・トップコ」の買収(6月)が23年最大のM&A案件であり、本件の買収金額874億円は、22年の外食M&A総額(617億円)をこの1件だけで上回るものだった。また、トリドールもピザ料理チェーンを展開するイギリス「Fulham」を買収(4月)しており、こちらも買収金額179億円の大型買収となった。

 (3)で話題となったのは、人材派遣大手のフルキャストホールディングスによる有名ラーメンチェーン「らあめん花月嵐」を展開するグロービートを買収した案件(6月)で、本件も買収金額80億円の大型案件であった。

 約30年の歴史を有し、海外含め200店舗を展開する大手ラーメンチェーンが、アルバイト派遣を強化中の人材派遣大手に買収され、買収される側の現経営陣はそのまま続投するという。

 本件のような、異業種だが買い手にとっても明確な事業シナジーが見込め、売り手の経営陣が引き続き経営に従事するというのは、コロナ禍が落ち着いたとはいえ、人手不足やコスト高、借入負担が重い中小外食チェーンにとっては、今後を考える上で参考となる案件ではなかろうか。

 24年は23年以上に国内外の政治経済が変動するとみられており、23年に続いて(1)~(3)を要因とするM&Aがさらに活発になるであろう。

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