2024年8月度、外食動向調査 フードコンサルティング

2024.11.04 549号 05面

 ●酷暑続き食べやすい業態好調

 日本フードサービス協会が発表した外食産業市場動向調査によると、2024年8月度の売上げは、前年同月比109.3%となり33ヵ月連続の増加を記録した。

 夏休みシーズンによるインバウンド客のさらなる増加に、お盆期間中の外出機会も増えたことから、客数は前年同月比4.7%増、客単価も4.4%増となった。

 個別に見ると、前年比を下回った業態は前月の29業態から5業態まで減少しており、好調だった前年比の影響によるNATTY(91.6%)、濱かつ(97.5%)以外は、いずれも前年比99%台と軽微な減少幅にとどまった。

 業態別では、酷暑の影響からか、食べやすく手頃な価格帯である「ラーメン・中華」「そば・うどん」「牛丼」「FF(ハンバーガー)」の各業態が好調であった。

 ●飲食店に対する事業承継支援

 先日、吉野家HDより「アトツギレストラン」なるタイトルの興味深いプレスリリースがあった。その内容は、吉野家HD子会社の株式会社シェアレストランが始める新サービスとのことで、「飲食業の経営者の高齢化、後継者不足、採用難という社会課題に着目。後継を求める飲食店オーナーと、店舗経営やノウハウを吸収してお店を引き継ぎたい開業希望者をマッチングする 新サービス『アトツギレストラン』を本日より開始」とうたっている。

 そもそも株式会社シェアレストランは、レストラン運営の子会社ではなく、空きスペースを間貸ししたい人と間借りしたい人を結ぶサービス「シェアレストラン」(https://share-restaurant.biz/company/)」を運営するシェアリングサービスを提供している企業だ。

 プレスリリース記載の通り、飲食店におけるオーナーの高齢化と後継者不足は、特に地方で深刻な問題として顕在化しており、全国的にも各地の県庁や商工会議所、地方銀行など地元の行政、商工業団体、金融機関がさまざまな取り組みを始めている。

 他方で、飲食店の開業希望者が大きく減っている訳でもないことから、お店の先行き不安を抱えるオーナーと、開業希望を持ちながらもチャンスに恵まれない開業希望者の間に大きなギャップが存在している社会課題があり、これに対する吉野家HDとしての解決策が「アトツギレストラン」なのだろう。

 「アトツギレストラン」の特徴として、店舗オーナーと開業希望者の双方が約半年間、相手の状況をしっかりと確認した上で店舗を譲るor断る、引き継ぐor見送るという決断ができることである。

 一般的な事業承継や店舗買収の場合は、買った瞬間から店舗運営にかかわるリスクを買い手がすべて引き受けることとなり、昨今の変化が大きい経済的、社会的な状況を鑑みるに、特に個人が買い手となる場合はリスクが高いと言わざるを得ない。

 これに対して「アトツギレストラン」であれば、取り組み始めた後の状況次第では、「やっぱりやめます」という選択肢が飲食店のオーナーと買い手候補の双方にあるというのが、一般的な事業承継に伴う双方の不安感を払拭できる仕組みとなるであろう。

 飲食店の事業承継サービスは、事業承継マッチングサービスを展開するスタートアップ「relay」でも提供されており、テンポスグループなどが提供している居抜き物件の買い取りによる飲食業への参入も含め、さまざまな事業承継と新規開業の手段が増えることが、飲食業界の活性化につながっていくことであろう。

 〈参考〉

 「アトツギレストラン」https://share-restaurant.biz/atotsugi-lp/

 「relay」https://relay.town/

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