アポなし!新業態チェック(217)「タリーズコーヒー」武蔵境かえで通り店
●「タリーズコーヒー」新タイプの大型店 太陽光発電を備えた環境配慮型 独立したペット専用区画も用意
タリーズコーヒージャパンは、ペットフレンドリーと環境配慮をうたった「タリーズコーヒー」の新店舗を東京・三鷹市に出店した。JR中央線の武蔵境駅から南に延びる、通称「かえで通り」に面した同店は、20台の駐車場を備えたドライブスルー対応店舗。内装には多摩地域で産出される木材を豊富に使用し、余裕のある客席配置にもかかわらず、店内に88席、テラス席6席を確保した大型店だ。また、屋上には太陽光発電システムを装備し、店舗運営に必要な電力の一部をまかなっている。
厳密には新業態という位置づけではないため、メニューそのものは既存の「タリーズ」店舗と同じだが、同店の最大の特徴は、屋内にペットを同伴できる専用区画を用意していることにある。ペット専用区画は4~5組の来店客が大型犬を伴って利用できる程度の広さで、通常の客席入口とは別に、ペットと一緒に直接この区画に入ることができる別の出入口を設けた。これは、ペット同伴の利用者と動物の苦手な利用者の動線を分けて互いに共存するためのもので、外食大手の店舗では珍しい取り組みだろう。加えて、外部のテラス席もペット同伴で利用可能となっている。
同店の駐車場には、タイムズ24が運営する「タイムズ」パーキングのシステムが導入されており、駐車場自体は24時間利用できる。最初の30分は駐車料金が無料で、同店を利用すると60分の無料時間が追加される仕組みだ。
「タリーズコーヒー」の新たな展開をけん引するのか、興味深い店舗だ。
★けんじの評価:東京都内で初のドライブスルーを導入
「タリーズコーヒー」は1992年、米国・シアトルで生まれた。97年に松田公太氏が日本国内での営業権を取得し、東京・銀座に日本1号店を出店。翌年には日本法人となり、その後、上場も果たしたが、米国タリーズ本社の経営悪化などの経緯により、MBOを行って上場を廃止している。2005年には、米国から「タリーズコーヒー」の日本における商標権、営業権などをすべて取得して、日本国内で独立したブランドとなった。翌年、現在の伊藤園の傘下に入る。その後、日本法人の創業者であった松田氏は同社の経営から退き、「Eggs’n Things(エッグスンシングス)」を立ち上げてパンケーキブームを主導したことはよく知られている。
かなり複雑な経緯をたどった「タリーズコーヒー」だが、現在の公式サイトには、そうしたブランドの沿革がほぼ掲載されていないようだ。企業としてはあまり周知したくない情報もあるのだろうが、ブランドの歴史を伝えることはブランディングの定石のひとつと思う。
公式サイトによれば、この原稿を書いている時点で、「タリーズコーヒー」820店超のうちドライブスルーを備えた店舗は12店舗しかない。関東には4店舗、東京都内では初めてのドライブスルー店である。「スターバックスコーヒー」は現在2000店舗以上あり、全国に550店舗ほどのドライブスルー店舗があるようだ。かつては、シアトル系として覇を競った両者だが、前途には何が待っているだろうか。
◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。
●店舗情報
「タリーズコーヒー」武蔵境かえで通り店
開業=2025年5月23日/所在地=東京都三鷹市井口1-23-23
●編集協力:株式会社イートワークス
http://www.eatworks.com/