メニュートレンド:“旅するもんじゃ”M・Z世代の心つかむ
手前の「毛沢東スパイスマーボー」は豆腐の上にこんもりと麻婆玉をのせた盛り付けがユニーク。「韓国海苔の豚キムチポッカ」は豚キムチ炒め。「イカ墨リゾット」はイカ墨を米飯と合わせて玉にしている。高さを出し、彩りも計算されたビジュアルがおいしさ演出の効果を高めている
東京下町発祥のソウルフード「もんじゃ焼き」がブームに沸いている。それをきっかけに創作性の高い差別化メニューが続々登場。東京・渋谷の「元祖海老出汁 もんじゃのえびせん 渋谷ストリーム店」が提供するのは、“もんじゃ×イタリアン”“もんじゃ×中華”といった各国料理との異色コラボ。進化する昭和レトロ・フードに若いM・Z世代からの支持が高まっている。
●もんじゃ焼きと各国料理がコラボ 彩り重視の盛り付けが新発想
「もんじゃ焼き」は、昭和レトロな趣やセルフで鉄板焼きする楽しさに加えて、だしを注いだときに勢いよく上がる湯気や音が動画やSNSと親和性が高い。若者世代がそうしたもんじゃ焼きの魅力を新たに発見した格好だ。
「テーマは“旅するもんじゃ”」と業態開発を担当した大森俊哉営業推進部部長は語り、イタリア料理の「イカ墨リゾット」や中華の「麻婆豆腐」などといった、誰もが知る世界各国の人気料理をもんじゃ焼きで再現した。
とはいえ商品化は試行錯誤の連続だったそうだ。「イタリア料理では、カルボナーラやミートソースなども候補にあったのですが、試作してみるともんじゃ焼きの味がしない。ただのカルボナーラソース、ミートソースになってしまいました」と苦笑い。もんじゃ焼きというベースを崩さずに、合わせる料理の持ち味も表現できる料理選びや味のバランス設計に苦慮したそうだ。
提供時の盛り付けも秀逸だ。「もんじゃ焼きに盛り付け方なんて関係あるのか?」と、いぶかる読者もいるだろうが、それこそが同店の慧(けい)眼といっていい。ざく切りしたキャベツとだしだけを入れた丼に皿をのせ、その上に具材を盛り付けることで一品一品の特徴を視覚的に表現しているのだ。従来型の、丼にすべての具材とだしが入った提供方法との違いは一目瞭然。こうした映えるポイントを押さえた点が若者世代に刺さった。
新規客に対しては1品目のもんじゃをスタッフが焼いて焼き方を指南。具材とだしを別にした利点を生かした焼き方は、鉄板焼きの楽しさを高める効果もあるようだ。
ベースとなるだしも個性が光る。屋号が示すとおりエビからとっただしは焼き上がったときの香ばしさが際立ち、酒のアテとしても最適だ。
すでに首都圏2店舗、大阪にも3店舗を出店しているがいずれも好調。「外食感度の高い若者が集まる繁華街を中心に出店を進めていきたい」と大森部長は意欲を見せる。
●店舗情報
「元祖海老出汁 もんじゃのえびせん 渋谷ストリーム店」
経営=ダイナック/店舗所在地=東京都渋谷区渋谷3-21-3 渋谷ストリーム2階/開業=2023年9月/坪数・席数=60坪・110席/営業時間=11時30分~15時、17時~23時(土日祝は通し営業)。無休/平均客単価=昼1500円、夜3000円
●愛用食材・資材
「台湾拉麺の素」エバラ食品工業(横浜市西区)
客のセルフ調理もしっかりカバー
各卓に鉄板がある同店は、もんじゃの他にも客がセルフで鉄板焼きを楽しめる食事アイテムが充実。同品は締めメニューの「ピリ辛台湾焼きそば」(1089円)に使用しているが、パンチの強い辛さと風味がクセになる。愛知・名古屋のご当地ラーメンの味に調味して焼そばにアレンジ。調味設計の完成度が高く、客のセルフ調理でもブレなく仕上がる。
規格=500ml
【写真説明】
「韓国海苔の豚キムチポッカ」1,192円~(税込み)
「イカ墨リゾット」1,529円~(税込み)
「毛沢東スパイスマーボー」1,192円~(税込み)