外食の潮流を読む(110)ラーメン、女性、フランス料理、SDGsで商売を組み立てた勝算

2024.08.05 546号 11面

 「フレンチラーメン」というものがある。その名のとおり、フランス料理の技法を取り入れたラーメンだ。白湯のようなスープの上の盛り付けが凝っている。これは2017年1月に設立した縁petit(エンプティ)という会社が展開していて、24年5月末現在直営3店舗、FC8店舗となっている。本店的な存在は東京・神楽坂駅の飯田橋よりの出口からすぐの場所にある。店名は「サーモンnoodle3.0」。サーモンをメインの食材として使用している。見た目は「フランス料理のようなラーメン」だが、鶏がら、豚骨スープのラーメンとは異なる、新しい感覚のラーメンだ。

 同社代表の丸尾聖(きよし)氏(38歳)によると、同社のフレンチラーメンは「鯛」を使うことから始まった。同社の店舗の中には鯛のラーメンを提供する「抱きしめ鯛」「恋し鯛」といった店舗が存在する。

 同社が「鯛」のラーメンを作ることになった背景には壮大な展望がある。

 代表の丸尾氏は飲食業のコンサルティングを展開してきて「海外に届けられる再現性の高い飲食」について考えるようになった。そこで、日本に来たことのある海外の人に尋ねると、皆「日本食」を楽しみにしていて「ラーメン」がおいしかったという。では「ラーメンを海外に」と考えたときに、既に海外でも鶏がら、豚骨のスープは飽和状態で、別の個性が必要だと考えた。日本のラーメン市場を見渡すと、不足しているのは「女性層」だと気づく。

 では、鶏がら、豚骨のスープではない「女性層」に受けるラーメンは何か、と考えて「フレンチラーメン」を想定した。

 「フレンチラーメン」が「鯛」に行き着いたのは、まず、海外の人が使用食材に「日本らしさ」を連想するのは、日本は海に囲まれていることから「魚介類」ではないかと。鯛は日本人にとって「魚の王様」である。しかしながら「鯛」は頭や中骨が大きくて半分以上が廃棄されている。この廃棄される部分を活用して、濃縮スープやパウダーを作ると海外に容易に持っていくことができる。この仕組みはSDGsであり、使用量が増えるに伴って計り知れない高い価値をもたらすことになると想定した。

 日本国内では「フレンチラーメン」をFCで展開していく。加盟店にはロイヤルティーを課することなく、麺、スープ、かえしに同社の利益をのせて供給する。現状、神楽坂の直営店では原価率37%となっているが、廃棄されるものの活用であるから、FCの店舗数が増えることによって原価率は下がっていき、加盟店の利益は増えていくことになる。

 海外では現地の法人に本部になってもらい、同社は現地の法人に「食材卸」を行うという。すでに台湾、インドネシア、タイ、フィリピン、ニューヨークにパートナーが存在して「フレンチラーメン」の開業を準備中とのこと。「ラーメン」「女性」「フランス料理」「SDGs」とキャッチーなポイントを集めて組み立てたこの飲食ビジネスに注目したい。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

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