電化厨房特集:ラーメン店電化厨房最前線=丸千代山岡家「山岡家」

2008.05.01 341号 05面

 こだわりの豚骨がらスープで急成長している郊外型ラーメンチェーン店の「山岡家」は、つくば店(茨城県つくば市)でのIHローレンジの試験導入を皮切りに、昨年暮れに開業した丸ヶ崎店(さいたま市見沼区)でオール電化、大谷地店(札幌市厚別区)で電化厨房を初めて採用した。いずれも実験店の位置付けだが、新店はもとより既存店でも、電化導入の検討に乗り出している。

 「山岡家」の命は、炊き出しに3日間もかける豚骨がらスープだ。そのため、ゆで麺機やギョウザ焼き機は、使い勝手の良いIH調理器に替えても、ローレンジだけは寸胴加熱に優れるガス機器を守ってきた。ところが、折からのガス料金アップが響き、光熱費のコストが急騰したことから、コスト抑制対策としてローレンジの電磁化を検討。ついに、厨房機器の電化による電化厨房、空調と給湯を含めたオール電化の導入となった。

 「電化のメリットは知ってましたが、IH調理器で寸胴を加熱すると、スープの対流が変わって、炊き出しがままならないので、導入を断念してきました」と顧みるのは、取締役の一由聡さん。

 ところが、テストキッチンのIH調理器で、加熱出力と時間設定を微調整する実験を重ねるうちに、ガス加熱と同じ効果がある炊き出しパターンをつかみ、対流の課題を克服した。

 「独自の加熱プログラミングを構築し、品質、原料、オペレーションに大きな変更はありません」と一由さん。

 そして、歯止めがかからないガス料金の高騰にも後押しされ、オール電化厨房の導入に踏み切った。

 新店導入から4ヵ月を迎えたが、ランニングコスト削減の効果は顕著だ。まだ1年目で夏場の経験がないため明言を控えるが、それでも「いまの調子なら、ガス料金の高騰分を補える」と言い切る。また、これまで既存店でも部分電化が進んでいるため、電化厨房にかかる追加投資はIHローレンジだけ。今のガス料金の高騰が続くことを考えれば、早期での投資回収も十分可能だ。

 「コスト抑制効果もありますが、職場環境改善のメリットも強調したいですね」と一由さん。「排熱が出ないので熱気が減りましたし、加熱調整をプログラム管理できるのでスープ管理も楽。何より直火がないので安全。パート・アルバイトさんが主力の24時間営業でも安心ですね」と声を弾ませる。

 「山岡家」の今後の店舗展開において、電化厨房は成長戦略の大きな試金石となりそうだ。

 ◆企業メモ

 (株)丸千代山岡家(本社=札幌市東区東雁来7条1-4-19)事業内容=こだわりの豚骨がらスープを売り物に郊外型ラーメンチェーン店「山岡家」を84店舗展開。

 ◆店舗メモ

 「山岡家」(さいたま市見沼区丸ヶ崎)坪数・席数=54坪・60席/営業時間=24時間営業/目標月商=1億円

 ◆使用機器紹介:(株)中部コーポレーション「IHローレンジ10kWタイプ(DD18PA)」

 東京電力と中部コーポレーションが共同開発した50cm大型寸胴用のIHローレンジ。驚異の10kW、ガスコンロ2万kcal相当のハイパワーを誇り、鍋中心部から外側に向かって対流が起こる。5プログラム&5段階運転の機能付き。1つのプログラムで派和運転・温調運転を織り交ぜ、5つのステップを設定できる。

 IH対応の大型寸胴鍋(54cm、60cm)も近日発売予定。

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