食文化のショールーム「日本食レストラン」:英国 ロンドンに200店集まる
英国の飲食店(レストラン、カフェ、ファストフード店、持ち帰り店なども含まれ、パブは含まれない)経営企業数は約5万5645社、バー(エンターテインメントを行うライセンスクラブおよび独立、フランチャイズ、チェーンのパブ、ワインバーなど)の経営企業は4万7537社とされる(03年)。
1998年と比較すると、03年のレストラン企業数は15%増え、売上げは44%増えている(表1)。
◆日本食レストラン事情
日本食レストランおよび日本食品店の数は全体では増え、日本食レストランかどうか定義が困難な店もあり、フィナンシャル・タイムズ紙でいわれている数値と異なるが、現在、英国で約300店、うちロンドンで約200店強だ。正確な数値はないが、日本食レストランのうち6~7割が日本人以外の経営者だといわれている。
イエローページ社のプレスリリースによると、1995年から05年の10年間で、日本食レストランの数は約23倍に増えている。
日本食レストランの中には、約5万人(うちロンドンが4万人)いる日本人をターゲットにしている店もあるが、日本の景気低迷による日本人駐在員やその家族の減少などの影響もあってこれらの形態の店舗数は増えていない。
近年、店舗数を伸ばしているのは、英国の人もターゲットにした店だ。この中には、さまざまな食を楽しむ高所得者層をターゲットに、店の雰囲気などもおしゃれにした高級店もあるが、圧倒的に数を伸ばしているのは、味はともかく高くない値段で寿司などを提供する店舗だ。
◆食品衛生
地方自治体(Council)は、事業者から「食品事業所登録」(Food Premises Registration)が行われ、営業が開始され次第、当該レストランについて、衛生上の調査を行い、今後、どの程度の頻度で抜き打ち調査を行う必要があるかを判断する。調査の結果によっては、地方自治体から改善指導を受けたり、カウンセリングを受けることを求められたりするほか、多くはないが危険と判断された場合、営業中止の措置が執られる場合もある。
英国では、欧州委員会指令93/43/EECを受け、以下の規則が施行されている。この規則は、食品衛生に関する基本法である「1990年食品安全性法(Food Safety Act1990)」の下に位置付けられ、同指令の英国内での適用を目的に定められたものだ。
○「1995年食品安全(一般食品衛生)規則(FoodSafety〈General food Hygiene〉Regulations1995)」
○「1995年食品安全(温度管理)規則(Food Safety 〈Cremperature Control〉Regulations1995)」
飲食店を含む食品事業者は、これらの規則に従うことが義務付けられている。
◆食材の仕入れ
日本食材の卸売業者の話では、日系でない日本食レストランの顧客の割合が増え、逆に日系の日本食レストランの割合は減少し、日系でない日本食レストランで提供している料理は、オーセンティックな(本物の)「日本食」というよりは「日本風」のフュージョン料理が多いという。また、非日系の日本食(風)レストランからの発注に対しては、食材に関する相談を受けたり、食材の種類についてのアドバイスを行うこともあるという。日本風のレストランが、「ジャパニーズレストラン」と称して日本の食材を使い、日本食からかけ離れたメニューを提供したりするケースがある一方で、「アジア風」と称する非日系レストランで寿司や刺し身、天ぷらといったメニューも見られる。また、現地で調達しやすいものや安く済む食材を使って生み出したメニューも数多く存在しているのが実情だ。
このような中で、日本食レストランで使用する食材の分野別仕入れの状況について、日本食レストランおよび日系食品卸売業者を対象に行ったヒアリングをもとに現状を紹介する。
〈野菜〉野菜に関しては、基本的に現地の業者が利用されている(表2)。
〈魚介類〉魚介類に関しては、現地にある日系の鮮魚店が業務用卸売も行っているため、寿司ネタを中心によく利用されているようだ。このほか、エビやタコ、イカなどは英系など現地の業者も利用されている。ヒアリングでは、英国では文化的な違いから魚を生食することへの理解が薄く、現地の業者の鮮度管理の徹底や扱い方が日本食レストランの望む水準を満たさないケースがよく見られるという(表3)。
※資料出所=ジェトロ「外食産業の英国進出関連情報06年1月」