トップインタビュー:コート・ダジュールカンパニー 彦坂信也社長

2009.06.01 358号 21面

 「コート・ダジュール」は、カラオケボックス業態についての固定観念を次々とくつがえす独自のコンセプトで成長を続け、昨年ついに店舗数100を超えた。ファミリーでも入りやすい明るく清潔な店内、食事として十分高品質なメニューなど、他のカラオケボックス業態に先駆けて注力してきたサービスがお客の厚い信頼につながっている。現在、陣頭指揮をとる彦坂信也カンパニー社長は35歳だが、多店舗展開の一翼を担ってきた実績を持つ。この不況をどう勝ち抜こうとしているのか、若きリーダーに伺った。(文責・さとう木誉)

 –コート・ダジュールの特徴を教えてください。

 彦坂 コート・ダジュールは、アオキグループが所有する遊休スペースを活用する事業としてスタートしました。第1号店は1998年の11月にオープンした横浜市都筑区の「すみれが丘店」です。当時のカラオケボックスといえば、3K「暗い」「汚い」「臭い」。そんな状態でも繁盛している店がたくさんありました。しかし当店は、明るく、清潔で、開放的な店内で、おいしい料理と一緒にカラオケを楽しんでもらうというスタイルを明確に打ち出してきました。店名のコート・ダジュールは、当店のコンセプトそのものと言ってよく、南フランスのリゾート地であるコート・ダジュールにまで実際に足を運んで、その雰囲気、美しさを体感してきています。カラオケボックスでもこの快適さ、おもてなしの精神をお客さまに提供していこうと内装の細部、料理のクオリティーにまでこだわりをもって取り組んでいます。

 –お客さまの滞在時間や客単価は平均してどれくらいですか。

 彦坂 滞在時間は時間帯によっても異なりますが、平均して3時間といったところでしょうか。客単価はおよそ1500円です。

 –コート・ダジュールでは飲食の売上げはどのくらいを占めるのですか。

 彦坂 45%といったところです。当店は、飲食にも力を入れていますので、構成比は他店と比べても高い方です。

 –料理メニューの開発にはどのようなコンセプトで取り組んでいるのですか。

 彦坂 分かりやすく言えば「名物商品は磨き上げ、続けていく」。当店の名物商品といえば、やはりピザです。各店舗にピザ専用のオーブンがあるカラオケ店は、業界でも当店だけでしょう。これをどこにも負けないくらいの付加価値のある商品に育てていきたい。

 今年は、オープン当初の大ヒットメニューだった直径30cmのLサイズピザを復活させました。

 –調理のオペレーションはどのようになっているのですか。

 彦坂 すべてアルバイトでできる半調理品です。誰にでも簡単に早く作れて、なおかつおいしい。これも当店の商品開発の要ですね。理由は、カラオケ店は飲食店と異なり、室料として時間に料金が発生しています。お客さまにお待ちいただいている間にも料金がかかっているのです。ですので、少しでも早く提供しようという意識を強く持って開発しています。

 調理時間は、ピザが一番長くオーダーが入ってから10分以内、ほかはその半分くらいの時間で提供できるような目安で考えられています。未経験者が作っても同じ時間で、同じ味で提供できる仕組み作りも含めて商品開発なのです。

 –商品の開発には、彦坂社長はどのようにかかわっているのでしょうか。

 彦坂 自分の性格からして現場のことをしっかり把握していたい。自分で作ってみて、作業から味まで確認しないと気がすまないのです。ちょっと入り込み過ぎかもしれませんが、先頭に立つ私が現場のスタッフやお客さまに「これが自慢のおいしい商品です」と伝えなければいけませんから、大事なことだと思っています。

 –外食産業は不況のあおりを受けてどこも苦戦しています。カラオケボックス業態のコート・ダジュールの現状はどうですか。

 彦坂 たしかに社会人のお客さまについては厳しい状況です。半面、シニアやファミリーといった客層については、好調に推移しています。とくにシニアのお客さまが順調に増えていますので、当店では、「Over 60’s Club(オーバー・シックスティーズ・クラブ)」という60歳以上のお客さまを対象とした割引サービスをいち早く導入しました。また、シニアの方にも食べやすい和食メニューの充実も進めています。

 –和食メニューはどのくらいあるのですか。

 彦坂 グランドメニューとして15品ほどあります。そして4月から「さっぱり美味しい和み食彩」という春フェアとして8品の新メニューを投入しました。うどんや雑炊といったカラダに優しいメニューが中心で、好評を得ています。

 –現在、シニア層の客数はどのくらいの比率ですか。

 彦坂 10%前後です。日中の利用が主ですが、ときにはオープン前からお待ちいただけるお客さまもいらっしゃいます。午前中など8割くらいがシニアのお客さまなんてこともあります。

 シニアのお客さまは、週末になるとご家族の方を連れてきてくださったりすることも多いのです。当店としても本当に大切にしていきたいお客さまなのです。

 –カラオケボックス業態は、繁華街や駅前を中心とした出店より、生活圏に近い郊外型の出店の方が、時代のニーズに合っていると感じます。

 彦坂 この業態は、法的規制の変化などの影響を受けやすいのです。過去の経験から、今好調だからと偏った出店の仕方をするのは危険だということを学んでいます。郊外型にこだわることなく、お客さまの喜ばれるところにバランスよく出店していきたい。

 –今後の計画、目標を教えてください。

 彦坂 今期は、15店舗前後の新規出店を目指しています。カラオケボックス業態の中で上位に食い込んでいくためにも、お客さまの求める場所への出店、求めるサービスの充実を、ひとつひとつ実現していきます。

 ◆プロフィール

 ひこさか・しんや=1975年愛知県出身。経営者への夢を抱き、2001年2月に(株)コート・ダジュール(現(株)ヴァリック)入社。店長・新規店舗の立ち上げに従事し、同社の多店舗化成長期の現場を支える。その後、本社で教育部門の構築を行い、2009年1月にコート・ダジュールカンパニー社長に就任する。

 ◆企業メモ

 カラオケ&パーティー コート・ダジュール(本社所在地=神奈川県横浜市都筑区北山田3-1-50)/経営=(株)ヴァリック/設立=2000年10月/資本金=1億円(09年3月31日現在)/従業員数=407人(同)/店舗数=109店(09年4月30日現在)/公式サイト=http://www.cotedazur.jp/

 ◆事業内容

 紳士服のアオキ(現(株)AOKIホールディングス)が遊休スペース活用の目的で、当時としては珍しい郊外型のカラオケ「コート・ダジュール」をオープン。経営の(株)ヴァリックは、カラオケのほか、複合カフェ「快活CLUB」やフィットネスクラブを運営、アオキグループのエンターテインメント事業を担っている。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら