外食史に残したいロングセラー探訪(43)松屋「カレギュウ」
牛めし、定食だけでなく、カレーにも定評のある「松屋」。ファストフード店とは思えない本格的な味わいに、松屋のカレーファンは多い。中でも「カレギュウ」は、牛めしとカレーライスという同店の2大メニューを1度に味わえるとあって、若い男性客を中心に支持されているボリュームのある1皿である。
◆2大人気メニューが同じ皿の上に 盛り付けにはファンからの愛ある厳しい要望
人気の定番商品であるカレギュウ誕生の背景には、カレーに真剣に取り組んできた松屋の歴史がある。
1966年東京・練馬区に開業した中華飯店として始まった松屋は、その2年後の1968年、現在の原型である牛めし焼き肉定食店として練馬区江古田に開業する。
(株)松屋フーズ・広報担当の石塚貴之マネジャーによると、カレーメニューの記録が残っているのは、西荻窪に2店舗目を出店した以降で、「西荻窪の店舗があまりにも忙しく、一時、定食をやめて牛めしやカレーなどクイックメニューだけにしたことがあるようだ」とのこと。しかし当時のカレーは、素材や作り方もごくごく一般的な家庭料理のカレーに近いものであったらしい。
同社が本格的にカレーメニューに取り組み始めたのは、杉並区に本部と工場を移した1980年から。当時はファミリーレストランが全盛期を迎えつつあった時代であり、同社もステーキ、ハンバーグ、カレーを柱としたファミリーレストランタイプの店舗を併設。このときに開発されたのが「ビーフカレー」であり、450円で提供し始める。牛肉をはじめゴロゴロと具がたっぷり入った本格派カレーであった。
その後、味の改良が行われてきたが、次に大きな転換期となったのはデフレ化が目立ち始めた2000年のこと。外食業界内での低価格競争が始まり、同社では牛めしを290円に値下げ。これに併せて翌年カレーも290円(現在、並350円)で提供することとなり、肉がたっぷり入ったものから、野菜が多めのオリジナルカレーへと移行する。
このようにカレーメニューが時代とともに変遷していく中、1998年に満を持してカレギュウが登場する。1皿にカレーと牛めしを盛り込み、学生や若いサラリーマンなどの胃袋をガッチリとつかんだ。その後、メニューから消えた期間もしばらくあったが、根強いファンからのリクエストに応えて2007年に復活した。
ファンにとって「カレギュウ」の最大の魅力は、“1皿で2度おいしい”点であり、それを楽しむためには肉にカレーがかからない盛り付けが重要であるらしい。これは盛り付けのマニュアルで徹底されており、少しでも肉にカレーがかかっているとクレームとなることも。また、肉を盛るときには、ご飯が水っぽくならないように、つゆをよく切ってからなどの決まりもある。
こうしたルールを守り、ファンに応えることで、カレギュウは長く愛されているようだ。
●店舗データ
「松屋」/経営=(株)松屋フーズ/本社所在地=東京都武蔵野市中町1-14-5/開業=1966年/事業内容=「松屋」753店舗、そのほか(2010年5月末現在)
◆松屋のカレークロニクル(2000年代)
2001年 オリジナルカレー値下げ(450円→290円)
2002年 チキンスパイシーカレー、[夏のカレーフェア]チキン唐揚げカレー/夏野菜カレー/カレー&マーボ
2003年 チキンステーキカレー、[夏のカレーフェア]オリジナル牛焼カレー/炭火焼チキンカレー/ロールキャベツカレー、(夏限定)つくねハンバーグカレー、ハンバーグカレー
2004年 [夏の彩りフェア]ココナッツカレー
2005年 唐揚げチーズカレー、角切りステーキカレー、[クール&スタミナフェスタ]フライドチキンカレー、[初夏のカレーウェーブキャンペーン]スープカレー(初のナン提供)
2006年 チキングルメカレー
2007年 カレギュウ復活、ビーフリッチカレー
2008年 麻婆カレー
2009年 フレッシュトマトカレー