関西版:イートアンド、市販用冷食「大阪王将の餃子」大ヒット
「大阪王将」や「太陽のトマト麺」など全国に約330店舗を展開する「イートアンド」の冷食事業が好調だ。FC業態で各地に出店を進めてきた同社は近年、冷凍ギョウザの「大阪王将の餃子」でも注目を集める。店舗空間で食を楽しませる外食企業が、同一ブランドの同一アイテムで市販用市場に展開するのは難しい。だが同社では、「シーンを選ぶのは消費者。食べ手が食べたい場所で楽しめることが重要。自社ブランドを二次活用しながら、総合フードビジネス企業を目指している」という。
同社が初めて家庭向け冷食、大阪王将の餃子を販売したのはコープこうべ。97年ごろに共同購入紙面での初回オーダーが5万パックと見事ブレークした。その後、全国の生協に広がり、東京のスーパーの冷食コーナーを経て、全国のスーパーに導入された。だが、同社の本拠地関西のスーパーには並ばなかった。同社がFC店とのバッティングを考慮したためだが、その後店舗との関係を築き、いよいよ今年10月、関西の主要スーパーにも大阪王将の餃子が登場した。
店舗自慢の味が家でも楽しめることがウリの冷凍ギョウザだが、実は店舗のそれと全く同じ商品ではない。同社ギョウザのレシピは社内取締役3人しか知らない門外不出。その配合は銀行の金庫で保管されているほどで、店舗と同じ調味料を使用するが、冷凍ギョウザ工場のスタッフも店舗同様、中具のバランスと調味料の比率を知らない。また、年齢・性別を問わず家族の誰もがおいしく食べられるように、1個17gと、店舗の23gより小振り。
購買層は50代、60代、40代、30代の順番。中華料理店での食事には抵抗があるが、本格的なギョウザを食べたい層のハートをつかんでいるのかもしれない。同社は「主婦でもうまく焼き上がるよう、フライパンに入れる水100gが一目で分かるトレーも採用したり、たれ付きだったことも支持を得た」と分析するが、認知度拡大の転機は食材値上げ時期。競合他社の値上げに反し、「食べてもらうチャンス」と12個330円を320円に値下げした。外食で培った自信の味に価格のインパクトを加え、間口を広げた。来春には店舗と同じでニンニク、ショウガを含む中具の原料をすべて国内産に変更する予定で、食にこだわる層を新たに獲得する可能性も秘める。
同社の勢いは冷凍ギョウザだけにとどまらない。近年、女性に人気のある太陽のトマト麺の看板商品「太陽のトマト麺」や新ブランド「おべんとう気分」の冷食販売を開始したほか、大阪王将の「専門店の食べるラー油」もスマッシュヒット。今後はギョウザやチャーハン、唐揚げの素などドライ品の開発も進める方針だ。