メニュートレンド:オムライスで“京”を味わう 「京都オムライス ルフ」

2011.05.02 386号 02面
スプーンを入れるのがもったいないような上品で美しい「京都オムライス」。フワフワ卵に包まれたご飯は、非常に滋味深い味わい

スプーンを入れるのがもったいないような上品で美しい「京都オムライス」。フワフワ卵に包まれたご飯は、非常に滋味深い味わい

重厚で落ち着いたイメージの店内。夜は肉、魚、地鶏料理なども充実

重厚で落ち着いたイメージの店内。夜は肉、魚、地鶏料理なども充実

 川床料理でも有名な京都市の先斗町(ぽんとちょう)は、祇園と並ぶ花街。50を数える大小の路地に、飲食店やみやげ店が軒を並べている。その路地のひとつに、行楽シーズンともなると行列のできるオムライス屋がある。その名は「京都オムライス ルフ」。それぞれに趣向を凝らした10種のオムライスメニューの中でも、ひときわ人気が高いのは、店名の冠にもなっている「京都オムライス」だ。このオムライス、いったい何がどう“京都”なのだろうか。

 ◆「和」でなく「洋」にこだわる ソースに「白味噌」、ご飯に「おばんざい」

 ルフの誕生は約15年前。オーナーシェフの大黒一仁さんによると、1980年から営んでいた京都市伏見区の洋食店でオムライスがよく出ていた。「オムライスは手順が多く料理人としてはあまり作りたくないメニュー(笑)だが、それを逆手にとってみるのも面白いかも」と、当時としてはめずらしいオムライス屋をオープンさせたという。ちなみにルフは、卵料理を意味するフランス語だそうだ。

 ただ先斗町は観光客が多いエリア。いくら味がよくても、「わざわざ京都に来てオムライスを食べることはないだろう」と思われては元も子もない。そこで考案したのが「京都オムライス」だ。

 これは、金時ニンジン、切り干し大根、コンニャク、油揚げ、干し椎茸などを甘辛く炊いた京のおばんざいを混ぜ合わせたご飯を卵で包み、白味噌仕立てのソースをかけたもの。白味噌仕立てというと、まったりとした甘さを思い浮かべるが、実際に食べてみると甘さよりもさわやかさが先立つ。聞くと、白ワインと生クリーム、それに少々のだしを加えているとのこと。和の要素を取り入れながらも、あくまで洋風の味にこだわった結果、「白味噌でしか作れない、それでいて白味噌のイメージを変える洋風ソース」が完成、繊細かつ複雑な大人の味わいを生み出している。もちろん、京のおばんざいを混ぜ込んだご飯や卵との相性も申し分なし。京都ならではのオムライスとして、地元の人にも観光客にも広く支持される一品となった。

 また、ウナギの茶漬け「うな茶」をヒントとした「宇治丸」(1350円)も有名。こちらはオムライスに煎茶をかけて茶漬けにして食べるというもので、ご飯には4~5時間煮漬けたウナギが混ぜ込まれている。

 ルフには、こうした独創的なものからオーソドックスなものまで10種のオムライスメニューが揃う。そしてその10種は、ソースだけでなく、中身のご飯についても具材や味付けがすべて異なる。

 昔ながらのオムライスの基本をおろそかにすることなく、京都らしい感覚や今風のトレンドも取り入れている同店。これからも“わざわざ京都に足を運んでも食べたいオムライス”にこだわり続ける。

 ◆店舗情報

 「京都オムライス ルフ」 所在地=京都府京都市中京区先斗町四条上ル 17番ロウジ、電話075・223・2455/開業=1996年頃/営業時間=午前11時半~午後3時、5時~10時、火曜定休/坪数・席数=約18坪・30席/1日来店客数=行楽シーズン200~250人、オフシーズン50~100人前後

 ◆愛用資材・食材:京野菜&乾物

 ルフの「京都オムライス」のご飯には、根菜や乾物、コンニャクを炊いたおばんざいや季節の青菜が混ぜ込まれている。その食材の多くは、安全と味にこだわりをもって地元で作られたものを、実際に作っている人から直接仕入れている。「それぞれの食材の特徴やそこに込められた思いを知り、それを料理に最大限に生かす」ためだ。

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