外食史に残したいロングセラー探訪(54)梅蘭「梅蘭焼きそば」
各メディアが横浜中華街の特集をすると必ずといっていいほど、取り上げる「焼きそば」がある。梅蘭の「梅蘭焼きそば」。その特徴は何といっても見た目のインパクト。円盤状の外見から味は想像できないが、それ以上に人の好奇心を引きつけるアイキャッチな商品である。と同時に、カリッと焼かれた表面の麺の香ばしさと、それを割ったときに出てくるあん……その絶妙なマッチングは多くのリピーターに支持されている人気メニューでもある。
◆肉まんをヒントに具材を麺で包む 中華街発のオンリーワン焼きそば
今でこそ、メディアに取り上げられ、梅蘭焼きそばを目的に来店するお客が多いが、メニューとして登場した当初は「これ何ですか?」と驚くお客がほとんど。
西裕一マネージャーは「今でも初めて見るお客さまは同じ質問をします。私どもは分かりやすく伝えるために“あんかけ焼きそばは、あんが外にかかっていますが、これはその逆になります”と説明しています」と話す。梅蘭焼きそばを語るのにその形状を無視することはできない。
大小数多くの中華料理店がひしめく中華街に梅蘭がオープンしたのは今から20年前。今でも中華家庭料理をメーンとしている梅蘭だが、当初はスタッフも3人、こぢんまりと営業をしていた。
しかし、激戦区で生き抜くには看板メニューが必要。「他店とは同じことをしたくない」というオーナーの思いは2年の歳月を経て梅蘭焼きそばを完成させた。
あの独特な形のアイデアは中華街にあった。「中華街の肉まんです。肉まんの中身は豚肉をベースとした具で、外はまんじゅうです。ですから外を揚げ麺にして、具を包んだらという発想だったそうです」と西マネージャー。
そのアイデアを実現させるには、いろいろな麺や具で試行錯誤を繰り返した。なかでも焼きそばを固める方法が大変だった。
その工程を簡単に説明すると麺をフライパンに敷いて、両面に焦げ目を付ける。「炒める」と「揚げる」の中間のイメージで。そして、手のひらサイズの麺の中に具を入れて包む。
「非常に工程は簡単ですが、焦げ目を均等に付けていくのが難しく、何ヵ月間、何回も作ってできるものです。あの形にたどり着くには時間がかかります」と西マネージャー。
また、普通「焼きそばの麺」は「汁そばの麺」と同じ物を使うお店が多いが、梅蘭では太さと素材にこだわった自家製麺を使用しているのも特徴の一つだ。
あんの種類は豚肉、モヤシ、玉ネギ、ニラを具とした梅蘭焼きそばをはじめ、牛肉を具とした「辛口梅蘭やきそば」。エビ、イカ、ホタテなどが入った「海鮮梅蘭焼きそば」。その他にもフカヒレ入りやカレー味もある。店舗によって違いはあるものの、そのバリエーションはまだまだ増えそうだ。
中華料理の激戦区中華街にあって、現在、さまざまな商業施設などにも出店し、多店舗展開を試みている梅蘭。「梅蘭焼きそば」は、多い時で1店舗で200食以上出る。
「もっと多くの方々に、熱々の梅蘭焼きそばを食べてもらいたい」と西マネージャーは情熱を持って力強く語る。まさに中華街の看板ともいえるオンリーワンのロングセラーメニューだ。
●店舗データ
「本店 梅蘭(バイラン)市場通り店」=神奈川県横浜市中区山下町133-10/梅蘭 渋谷店、梅蘭 ららぽーと横浜店(フードコート)、梅蘭酒家、梅蘭 ゲートシティ大崎店、梅蘭 六本木ヒルズ店、梅蘭 イーアスつくば店、梅蘭 みなとみらい店、梅蘭 静岡店、梅蘭 二子玉川ライズ店/公式HP=http://www.bairan.jp/pc/
おもなメニュー=「梅蘭やきそば」(¥900)、「牛肉入り辛口梅蘭やきそば」(¥1260)、「鶏肉入りカレー梅蘭やきそば」(¥980、梅蘭、梅蘭酒家、渋谷店限定)、「海鮮入り梅蘭やきそば」(¥1680)、「フカヒレ入り梅蘭やきそば」(¥3150)