近代メニュー革新!繁盛レシピ研究所:けいはん ひさ倉「鶏飯」

2011.12.05 393号 16面
1人前のセット内容は、鉄鍋に入れた鶏スープ(500ml)、白飯(1人前1合)、具材(鶏肉、錦糸卵、椎茸の甘辛煮、タンカンの干し皮、海苔、紅ショウガ、青ネギ、パパイヤの漬け物)

1人前のセット内容は、鉄鍋に入れた鶏スープ(500ml)、白飯(1人前1合)、具材(鶏肉、錦糸卵、椎茸の甘辛煮、タンカンの干し皮、海苔、紅ショウガ、青ネギ、パパイヤの漬け物)

「丸鶏と鶏がらだけのシンプルな鶏スープが自慢」と久倉茂勝店主

「丸鶏と鶏がらだけのシンプルな鶏スープが自慢」と久倉茂勝店主

 鹿児島県・奄美大島の郷土料理といえば、お茶漬け風に鶏スープを味わう「鶏飯(けいはん)」が有名だが、地元の飲食店が名物として提供するようになったのは、実は最近のこと。かつては家庭料理のイメージが強すぎて、鶏飯を出す店は珍しく、専門店も少なかったという。ご当地料理として知名度を高めたきっかけは1968年、皇太子さま(現在の天皇陛下)が当地を訪れ、夕食会で鶏飯を召し上がったこと。また93年、鹿児島県の学校給食が郷土食育の一環として鶏飯を採用したこと。そして94年、東京便が就航して観光客が増加。それらの相乗効果で外食メニューに定着した。

 なかでも「けいはん ひさ倉」は、天皇皇后両陛下が03年に来島された際、夕食会で腕を振るった島内随一の名店である。地元客、観光客を問わず人気を集めている。

 ◆営業の概況:転業し専門店の草分けに 地鶏3,000羽を放し飼い

 「けいはん ひさ倉」は、奄美大島空港と市街の中間の国道沿いに立地する120坪・134席の鶏飯専門店。夏場のピーク時は1日400~500人を集客している。客層は地元客と観光客が半々。日中客の100%が鶏飯を注文。夜は焼き鳥、鶏刺し目当てのアルコール客も多い。

 開業は1993年。店主の久倉茂勝氏は、地元名産・大島紬の職人だったが、下火にともない転業。家庭料理で毎週土曜日の定番だった鶏飯を生業に打ち出し、専門店の草分けとなった。現在、3万坪(山を含む)の敷地に約3000羽の鶏を放し飼いする他、農業も営み、食材のほとんどを自営調達している。

 鶏は、薩摩赤鶏、名古屋コーチン、烏骨鶏などを交配させた地鶏で、オリジナルの屋入地鶏(「屋入」は店舗住所の地名)と銘打っている。2代目の久倉勇一郎氏は「自然の肉質のおいしさを求めて、ストレスのない放し飼いにこだわっています」とし、「あっさりとしながらコクのあるうま味が自慢」と胸を張っている。

 ◆特徴と調理:丸鶏と鶏がらのシンプルスープ 当日と前日の仕込みをセットに

 鶏飯の決め手は、単純明快に鶏スープである。ひさ倉では、丸鶏18羽、鶏がら15kgを100リットル寸胴で5時間強、弱火で炊き上げる。この鶏がらスープに薄口醤油と岩塩を加えて調味し、鶏スープとする。また、スープを炊いた後、丸鶏を取り出し、肉を取り外し、冷蔵庫で一晩寝かせてから、手で裂く。当日炊いた鶏スープと前日仕込んだ鶏肉を合わせる仕組みとなっている。

 1人前のセット内容は、鉄鍋に入れた鶏スープ(500ml)、白飯(1人前1合)、具材(鶏肉、錦糸卵、椎茸の甘辛煮、タンカンの干し皮、海苔、紅ショウガ、青ネギ、パパイアの漬け物)。これを、白飯を器に盛り、好みで具材をのせ、鶏スープをかけて、お茶漬けのように食す。3~4杯に分けて楽しむのが一般的だ。

 ◆発祥と展開:殿様に献上した料理がルーツ 皇太子さまのお代わりを郷土の誇りに

 発祥は江戸中期から後期。当時、薩摩藩の代官所に近い島北部の佐仁区の住民が、シロハラという野鳥の肉を使った炊き込みご飯を、薩摩藩の殿様に献上したのが始まり、と伝わる。これが明治以降、鶏がらスープをかけた鶏飯に発展したという。島北部には、保存食の塩豚に鶏スープをかけた「豚飯」という伝統料理もあり、どちらが先かは不明だが、これらがルーツとされている。

 外食で登場したのは戦後間もない46年。島北部の食堂「みなとや」が初めて提供し、鶏飯のセット内容を形作った。68年、当時の皇太子さま(現在の天皇陛下)が、奄美大島の日本返還を記念して来島した際、同店で鶏飯を召し上がり、「皇太子さまがお代わりをされた」という実話があり、郷土の誇りとして言い伝えられている。

 ひさ倉の2代目、また奄美大島観光協会事務局次長を務める久倉勇一郎氏は、「鶏飯を突破口に、より多くの人に奄美の魅力を知っていただきたい」と意気込んでいる。

 ●店舗情報

 「けいはん ひさ倉」 所在地=鹿児島県大島郡龍郷町屋入/敷地・席数=120坪・134席/営業時間=午前11時~午後9時、無休

 ◆エバラで再現!模擬レシピ:「鶏塊湯」でやってみよう!

 ○作り方

 「鶏塊湯」をお湯で20倍希釈し、薄口醤油、岩塩で調味する。

 ○使用食材:鶏塊湯(ヂーカイタン)

 鶏骨、鶏肉を主原料としたスープに鶏肉の塊を加え、より鶏肉の風味とコクを引き出した、ワンランク上の濃縮がらスープ。スープベースはもとより、料理のコクづけなど、幅広く使える。20~30倍希釈が目安。

 規格=缶840g、3kg

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