メニュートレンド:店内のワインも「定価+999円」 BYO(持ち込みワイン)
「肉寿司」「炉とマタギ」をはじめ、関東で30店舗を超える個性的な飲食店を運営するスパイスワークス。コンセプト企画から店舗設計・施工までをトータルに手がける飲食店のトータルプロデューサーとしても知名度を上げており、「神田ミートセンター」や「八王子ロマン地下」など、話題の横丁事業をはじめとする再開発化にも携わっている。そのスパイスワークスが昨年11月、大阪へ初進出。日本ではめずらしい「BYO」システムが、合理的で実利を重んじる大阪人の嗜好と相まり、注目を集めている。
◆料理もワインもガッツリ!
「BYO(Bring Your Own)」は、「お好きなワインをお持ちください」の意。もともとはオーストラリアで生まれたもので、レストランにワインを持ち込めるシステムだ。
関東の飲食業界に数々の新風を吹き込んできたスパイスワークスは、関西第1号店としてこのBYOを導入した「魚介ビストロ sasaya BYO」を大阪・福島にオープンさせた。日本の飲食店では定価の2~3倍で提供されるのが一般的なボトルワインが、この店では1本999円の手数料で持ち込めるほか、店内に並ぶ約130種類のワインについても「定価+999円」で味わえる。
「大胆かつ丁寧に仕上げる新鮮魚介ビストロ料理を気取らずにワインと楽しむ」、これが魚介ビストロsasaya BYOのコンセプト。BYO導入にはコンセプトの具現化だけでなく、日本におけるワイン文化の新たな一面を切り開きたいとの“志”が込められている。
消費者は今、単なる低価格ではなく、たとえば同じ1000円で何を食べさせてもらえるか、どんなサービスが受けられるかという「新しい価値」を求めている。そう語るのは店長の丸山直也氏。「スパイスワークスは、いい意味でお客さまを裏切る新しい価値の創造を常に目指しており、BYOもその中のひとつ」というわけだ。当然ながらそこには、従来とは異なる経営手法が求められる。同社では、原価率30%が通用する時代は既に終わったと捉えており、コストや損益に関する独自の考え方や管理方法、無駄のない仕入れルートなどを果敢に取り入れると共に、緻密なシミュレーションに基づいた慎重な出店計画で、不可能を可能に変えている。
同じものならより安く、同じ価格ならよりよいものを求める傾向が人一倍強いとされる大阪人。BYOはそんな大阪人の気質にもマッチしており、たとえば贈答品の超高級ワインを持ち込んだり、コンビニでワインを購入してきたり、お気に入りワインをそれぞれが持ち寄ったり、オープン以来、思い思いのスタイルでBYOを使いこなす顧客が増えている。同業態での大阪2号店の出店計画も進んでおり、確かな手応えのもと、日本の飲食店における新しいワインの楽しみ方のさらなる発信と普及を目指している。
●店舗情報
「魚介ビストロ sasaya BYO堂島クロスウォーク」 経営=スパイスワークス/所在地=大阪府大阪市福島区福島1-1-51 クロスウォークB1F/開業=2011年11月/営業時間=月~金、ランチ午前11時半~午後2時(LO)、ディナー午後5時半~12時(LO11時)、土・日・祝、午前11時半~午後11時(LO10時)、日曜定休(祝前日の場合は営業)/坪数・席数=約52坪・100席/目標月商=1000万円
●愛用資材・食材
イタリア直送生ワイン
加熱もろ過もされていない無添加の生ワインは、香りも味もフレッシュそのもの。若いワインとは思えないコクがあるにもかかわらず、サラッと飲みやすい。生きた酵母が含まれているため熟成具合に応じ、樽ごとに味わいが異なるのも魅力だ。「魚介ビストロ sasaya BYO」では、日本ではあまり流通していないイタリア直輸入の樽生ワインが480円(グラス)で飲める。
規格=20リットル