近代メニュー革新!繁盛レシピ研究所:そば処 目分料「牛玉ステーキ丼」

2012.07.02 400号 29面
冷やしぶっかけそばとセットで看板料理のアピールにも成功

冷やしぶっかけそばとセットで看板料理のアピールにも成功

 北海道帯広市から西に30kmほどの清水町(通称・十勝清水)に「牛玉ステーキ丼」という町おこし料理がある。白飯の上に「味噌だれ牛サイコロステーキ」と「半熟卵焼き」をのせた丼物だ。

 誕生は、高速道路・道東道の全線開通を控えた2010年7月。旅客離れを懸念した町の有志が「地産地消グルメ」による集客策を提案。清水町を支える農畜産業の中から、道内生産2位の食用牛、同3位の鶏卵に着目し、官民一体で牛玉ステーキ丼を生み出した。

 提供店は11店で、昨年度の販売数は全店集計で約3万食に達した。昨年11月に道東道が開通してからは、道外からの観光客が着実に増えており、旅客離れどころか、「醤油だれ・豚肉の豚丼=帯広」に対極する「味噌だれ・牛肉の牛玉ステーキ丼=十勝清水」として集客効果を発揮している。

 牛玉ステーキ丼のレシピは基本的に全店共通。そば店「目分料」の田村雅史店主を中心に、皆でアイデアを持ち寄り、完成させたという。その目分料の事例を紹介する。

 ●営業の概況:3時間営業で平日150人、土・日・祝200人 開店30分で完売する限定提供

 清水町役場の向かい立地だが、面積約402平方km、人口約9000人の町なので、都市感覚では、かなり郊外といった方が正しい。それでも昼3時間営業で平日150人、休日200人を集客する繁盛ぶりで、町外客が9割を占めている。

 看板料理は、前日に石臼で粉をひき、当日の夜中に麺を打つ、鮮度抜群の手打ちそば。仕込みだけで1日12時間以上かける田村雅史店主の熱意は町でも一目置かれており、その田村店主が牛玉ステーキ丼の開発を先導した。

 平日15食、土・日・祝日20食限定で牛玉ステーキ丼を提供しているが、開店から約30分で完売する人気ぶりで、食べ損ねた目当て客は別店に流れている。

 田村店主は「もっと売れると思いますが、うちは手打ちそば屋なので、本業に差し支えない程度に」と苦笑いする半面、「牛玉を食べ損ね、手打ちそばを食べて、常連になったお客さまもいます」と相乗効果に喜んでいる。

 ●特徴と調理:十勝若牛と味噌だれが決め手 共通レシピの比較が醍醐味

 牛肉は、飼育期間14ヵ月、低脂肪・低カロリー、軟らかさが自慢の「十勝若牛」。卵は町内生産の鶏卵。調味は全店共通レシピの味噌だれ。

 調理は味噌だれ作りから始まる。日本酒、みりんを合わせて煮切り、砂糖、一味、ごま、醤油、合わせ味噌を加えて煮込み、冷却後、長ネギみじん切りをまぜ合わせる。この味噌だれは日持ちするので、使用頻度に合わせて作り置きしている。目分料の場合5日ごと。

 調理方法は、(1)牛肉の筋と脂を取り除き、約130gにカットし、味噌だれを片面に漬けて3時間置く。(2)注文後、全卵2個分の溶き卵、三ツ葉のみじん切りをフライパンに流し込み、半熟に火を入れて、白飯にのせる。(3)牛肉は、味噌だれを漬けてない片面に味噌だれを付け、ミディアムレアに焼き、サイコロ状にカットして卵焼きの上にのせる。(4)刻み海苔をあしらう。

 レシピは共通だが、各店によって個性が異なり、その比較が“共通レシピ”を楽しむ醍醐味だという。

 ●発祥と展開:町民が真剣に決起 旅客離れ対策で大逆転

 2009年末、高速開通による旅客離れを食い止めるため、集客プロジェクトが始動した。

 活性化協議会の吉田寛臣事務局長は「清水町は十勝の入り口で、峠越え・峠入りの旅客が一休みする街。高速開通で通過されると大打撃。道内の前例をよく耳にしてましたので、町全体で真剣に取り組みました」と振り返る。

 そして約180人が参加した決起大会で清水町が誇る牛肉と卵の活用に着目。有志11店のメニュー開発が始まった。

 「アイデアを持ち寄ったら、ロコモコ、ビビンバ、石焼き丼など、確かに牛肉と卵を使うのですが、本業とは異なる面倒な料理ばかり。そこで思い切って単純にステーキと卵焼きにしました。単純ゆえ、店のイメージを損なわないし、お客さまも分かりやすい。なにより清水町が誇る産品の持ち味を存分に生かせるので」と田村店主。「でも単純なだけに調味が難しく、味噌だれの開発に三十数回の試食会を要しました」と語る。

 今後、「醤油だれ・豚肉の豚丼=帯広」の対極として、「味噌だれ・牛肉の牛玉ステーキ丼=十勝清水」として全国発信して行く予定だ。

 ◆そば処 目分料

 所在地=北海道上川郡清水町南5条3-1/坪数・席数=30坪・62席/営業時間=午前11時~午後2時(ラストオーダー1時半)、水曜定休

 ●エバラで再現!模擬レシピ 「とんたれみそ」でやってみよう!

 ○使用食材:「とんたれみそ」

 万人向けの調味を手軽に演出

 豚肉、牛肉、モツ、鶏肉用につくられた味噌漬けのたれ。生肉に対し15~25%のたれが標準使用量。プレーンタイプの本品の他、赤味噌タイプ、白味噌タイプがある。

 規格=1号缶・3.3kg

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