外食史に残したいロングセラー探訪(78)キリンシティ「じゃが麺」
○料亭の手法をヒントに考案 スライサーの活用で全店メニュー化
ビールのつまみにはジャガ芋が付きもの。そのジャガ芋を日本のスライサー技術でビア・レストラン名物に仕上げたのが「キリンシティ」の「じゃが麺」だ。料理内容は、ジャガ芋をスライサー調理器で約1mmの麺状にカットし、フライパンで炒めて調味したもの。ツルツルとシャキシャキがまじった心地よい食感、シンプルな味わいが絶妙で、発売から約25年間、常連客から根強く支持されている。
●商品の発祥:料亭の包丁技術をヒントにスライサー調理器を活用
じゃが麺の誕生は1980年代後半。京都・河原町店の料理長が料亭の包丁技術をヒントにジャガ芋を麺状にカットして、ペペロンチーノ風の麺料理を打ち出した。これが社内で絶賛され、まずは河原町店で採用。まもなく、ジャガ芋を簡単にカットできるスライサー調理器を全店に導入し、グランドメニューに昇格させた。
田辺義則商品開発部長は「特別な材料は不要。調理方法も簡単。でも家庭では絶対に作れません。まさに外食メニューの真骨頂。しかも、これだけ万人向けで、和・洋・中に属さない創作料理も珍しい」と特殊性を強調する。
●商品の特徴:塩・コショー・バターのシンプルな基本形が人気
ジャガ芋は、油との相性がよく、ホクホクとした食感に優れる、国産トヨシロ。調理方法は次の通り。
(1)ジャガ芋をスライサーで麺状にカットし、水にさらして、水気を切り、仕込み置きする(2)注文後、熱湯で軽くボイルし、フライパンに移し、ベーコンを加えて炒め合わせ、塩、コショー、バターで調味する(3)皿に盛り、刻み海苔、青シソを添える。
これまで、バジル、豆板醤など多くの調味を試してみたが、結局はシンプルな基本形が一番支持されるという。
●販売実績:キリンシティに不可欠な名脇役
じゃが麺と同じジャガ芋を使用する姉妹料理「しらすの焼きじゃが麺」も人気定番で、これを合わせて日販は約10食。また、フードメニューは全部で76~90アイテムあり、その中で長年、売れ筋上位をキープしている。同様のロングセラーは、他に「チーズ&スティック」(450円)、「CITYポテト」(400円~)、「ホウレン草のサラダ」(550円~)、「“こがね鶏”のチキンバスケット」(850円)の4品。
田辺部長は「じゃが麺は当社にとって、あって普通、なければ寂しい、ほのぼのとしたポジショニング」と実感を込め、「キリンシティに不可欠な名脇役ですね」と説く。
●企業データ
社名=キリンシティ(株)/ 本部所在地=東京都台東区西浅草3-16-2/店舗数=キリンシティ・35店、キリンシティプラス・2店、時を楽しく・1店/事業内容=ドイツ中西部の都市、デュイスブルグのビールの名門「ケーニッヒ・ブルワリー」が展開するビヤパブ「ケーニッヒシティ」をモデルに1983年5月創業。ドイツピルスナービールの伝統技「3回注ぎ」による樽生ビールの提供がモットー。