プロの食材活用この食材でこの逸品:林原「トレハ」 トレハは“魔法の調味料”
東京都稲城市にある「ヨロシク寿司」は、知る人ぞ知る隠れた名店。銀座ならおそらく倍以上はすると思われる高級ネタが提供されている。ネタのよさ以上に同店の評判を高めているのが、店主・目黒秀信氏の寿司職人としての確かな技術。その腕前は、昨年8月に「すしの技術大全」(誠文堂新光社刊)という300ページ以上にわたる調理書を著したほどだ。寿司の技術向上に関しては微塵の妥協も許さない目黒氏が惚れ込んだ食材がある。それが林原の「トレハ」だ。
●素材の持ち味を存分に引き出す即戦力 素材の彩りが鮮やかに発色
トレハロース(製品名:トレハ)は砂糖と同じ天然に存在する糖質だが、さらにでんぷんやタンパク質の経時劣化を抑制したり、保水性に優れるなどの機能を持つ。その機能は、以前から注目されていたが、酵母から抽出するのにコストがかかり量産化には至らなかった。
1994年、バイオテクノロジー技術で食品素材事業を展開している林原が、世界で初めて、でんぷんに酵素を作用させて大量生産に成功。以来、「糖質調味料」としてトレハの商品名で、食品・飲食業界での利用が急速に広まっている。
なかでも特筆すべきは寿司業界。目黒店主がトレハと出合ったのが、約10年前に参加した寿司組合の講習会。「時間が経ってもご飯がおいしいと聞いて、自分で確かめたいと思いました」と職人の探究心に火が付いた。「まずシャリがサラッと切れて、ツヤがいい。シャリを切っている段階から、すでに違いを実感しました。もっと驚いたのは、1日経って普通だったら絶対食べられないようなシャリの味がぼやけていない、ツヤもある。びっくりしましてね」。
シャリの経時劣化という長年の懸案を、トレハが一気に解決したというわけだ。熱や酸に対して安定しているというトレハの特性は、時間が経過するほど明らかになるので、すでに惣菜弁当などにも使用されている。
さらに、目黒店主はトレハをネタの仕込みにも活用。カニやエビのゆで汁に加えると発色がよくなり、冷凍保存しても硬くならない。魚を締めるときに使用すると皮目の色がよくなり、身が硬くなるのを防ぐ。煮物は煮汁の濁りが少なく、煮崩れしない。卵焼きにスができにくい、ワサビの辛味を保つ……など挙げたらきりがない。
目黒店主は、塩や酢とトレハと合わせたものを「トレハ塩(塩10対トレハ3)」、「トレハ酢(酢1000cc対トレハ40g)」として常備し、使いやすくしている。「トレハは糖質ですが、砂糖の代わりと考えるのはもったいない。素材本来の力を引き出す“魔法の調味料”なんです。そのよさは使ってみないとわからないし、1度使えば、料理人なら、必ずその優れた特性に感激し、使わずにはいられないはずです」とトレハへの期待は高まるばかりだ。
●「ヨロシク寿司」目黒秀信店主
東京都鮨商生活衛生同業組合 常務理事 青年部長/東京都三多摩鮨商生活衛生同業組合連合会副会長
●店舗概要
「ヨロシク寿司」 所在地=東京都稲城市大丸630-6-106/席数=25席/営業時間=午前11時30分~午後2時(要予約)、午後5時~11時、火曜定休
●製品紹介:「トレハ」 食品素材で世紀の大開発
トレハロースは、キノコ、酵母などに含まれる糖質。人工甘味料ではなく、砂糖と同じ天然に存在する糖質で、甘さは砂糖の約4割。林原が、トウモロコシなどのでんぷんに酵素を作用させて、トレハを大量生産することに成功し、商品化が実現した。その特長は(1)でんぷん、タンパク質、脂質の経時変化の抑制、(2)食品の冷解凍時のダメージの抑制、(3)食品の保水性の維持、(4)食品の臭みを抑え、味を引き立てる、(5)煮崩れの抑制など。“魔法の調味料”として、食品・飲食業界での普及が広まっている。
規格=20kg、2kg
●(株)林原 本社所在地=岡山県岡山市北区下石井1-1-3日本生命岡山第二ビル新館
0120-05-8848