マッチで偲ぶ外食史:ルノアール 東京では知らぬ者のない喫茶業界のサバイバー

2020.03.02 493号 10面
※マッチは筆者のコレクションです。

※マッチは筆者のコレクションです。

 「ルノアール」は東京ローカルの喫茶店チェーンだ。経営する銀座ルノアールは現在、全ブランドで120店ほどの店舗を展開しているが、その大多数は東京にあり、他県では神奈川県と埼玉県、そして数年前に出店した熊本県のFC店のみである。創業は1964年。花見煎餅を経営する有限会社が喫茶部門を独立させて法人化し、日本橋に出店した喫茶店が1号店だという。社名が銀座ルノアールとなったのは71年(当時は有限会社)のことだ。

 東京周辺に住んだことがあれば、喫茶室「ルノアール」を知らないはずはない。ある年代以上の人ならば、ルノアールの絵が描かれたマッチをどこかで見ているだろう。それほど東京での知名度は高いが、他地域の人たちにとってはまったく無名のブランドなのかもしれない。全国区になる前の「コメダ珈琲」のようなものだろうか。

 このマッチはおそらく、80年代半ばごろのものだ。当時、「ルノアール」のような喫茶店は会社勤めの営業マンが休憩したり、誰かと待ち合わせしたりする場所として使われていた。オフィス街の喫茶店では、朝、取引先に出掛ける前にモーニングを食べたり、午後ぐっすりと昼寝をしたりする強者をよく見かけたものだが、今ではそんな光景を見ることもない。90年代半ば以降、バブル経済崩壊後にこうした喫茶店はほとんど姿を消してしまった。

 同社の現経営者はすでに創業から3代目となる。さまざまな荒波を乗り越えた老舗喫茶はどこへ向かうのだろう。

 (イートワークス代表 入江直之)

 ※マッチは筆者のコレクションです。

 編集協力:株式会社イートワークス(http://www.eatworks.com/)

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