アメリカ・ニューヨーク出店の現状を聞く! 焼肉トラジ・金信彦代表取締役社長

2023.06.05 532号 09面

 ◇YAKINIKU発信の世界拠点に

 ●若者集める「カッコいい」を追求 日本の焼肉輸出の試金石に

 創業28年目を迎える「焼肉トラジ」は首都圏を中心に68店舗を展開。厚切りの本格焼肉を主に、特急レーンやフルアテンダントサービスを採用するなど新業態開発にも積極的だ。一方、「トラジ卒業生」といわれる社員独立の焼肉経営者を多数輩出するなど、業界の活性化をけん引している。そんな躍動の急先鋒がニューヨーク出店だ。2021年8月に1号店を出店、25年の5店舗体制を視野に入れている。全国焼肉協会の会長でもある金信彦社長にニューヨーク(以下、NY)出店の狙いと展望を聞いた。

 ●命運をかけたチャレンジ

 –NY出店の狙いは?

 金 単純に「カッコいい」から。トラジは焼肉を志す若者を集めるため、常にカッコいい焼肉を目指してきた。そしてNY出店は創業時からの大きな目標。カッコいい象徴として、世界進出の試金石として、トラジの命運をかけたチャレンジと位置付けている。

 –焼肉輸出の先駆に?

 金 トラジ創業店は6卓・24席で1日集客150人以上の大繁盛を記録。その時、焼肉は、(1)国民食になれる実力がある(2)カッコよくすればお客さまも働き手も増える(3)商売に魅力があり業者さんが応援してくれる、という大きな可能性を確信した。それがいまや現実となり、焼肉は「焼肉産業」と呼ばれるまでに発展した。日本が誇る焼肉産業を輸出するためにも、レストランビジネス最前線のNYで確かな実績を作りたい。

 ●世界的ポテンシャルを実感

 –NYでの反響は?

 金 宗教的な理由を除き「焼肉は民族や老若男女を問わず世界的な潜在需要がある」と実感している。肉に偏った焼肉ではなく、野菜も豊富な焼肉料理と解釈され、キムチや醤(ジャン)の発酵作用も歓迎され、総じて健康イメージが強い(当店については)。

 私は常々「焼肉は味も栄養も王様」を理念に「五味五色」のバランスと彩りを尊重してきた。見て美しく、食べておいしく、健康に役立つ焼肉料理は、和洋中の専門料理に匹敵するポテンシャルを秘めていると思う。

 –他店との差別化は?

 金 日本発の焼肉店は別として、現地発の既存店はバーベキュー感覚の焼肉が多く、タレも調味もシンプル。複雑なおいしさを演出する「ビビム(混ぜる)」が欠けていると思う。かたや当店の常連客に感想を聞くと、大多数がビビムのおいしさを目当てに来店している。ビビムの魅力を知ったら、もはや後戻りできない。それが差別化の決め手だ。

 ●実力はプロとアマの差

 –厨房や接客は?

 金 現地発の既存店は、日本で長年しのぎを削ってきたわれわれに比べると、オペレーションもホスピタリティーもプロとアマの差があると思う。実は以前、現地発の焼肉店から経営指導を頼まれ、厨房オペレーションの改善で人件費を3割減らしたことがある。その成功がNY出店の背中を押した。自分たちもNYで十分勝負できると。

 –実績と予定は?

 金 店舗は60坪・16卓・64席。営業時間は17時~24時・客単価は約120ドル(チップ込み)。月間集客数は約1700人。人気部位の上位は骨付きカルビ、ヒレ、ロース。今年8月に2号店を開業。2年後の創業30周年までに全5店舗を築く予定だ。

 ●和牛と一緒に飛躍する好機

 –今後の抱負は?

 金 日本食材で和牛(WAGYU)が注目される中、和牛を多用する焼肉も日本の焼肉から世界の焼肉に飛躍する好機だ。しかし残念ながら、海外では「コリアンバーベキュー」や「日式焼肉」という認識が強い。日本独自の焼肉料理、焼肉のおいしさを訴求し、「YAKINIKU」という表記がグローバルスタンダードに定着するよう努める。

 –健闘を期待します。

 ●会社情報

 「焼肉トラジ」

 経営:(株)トラジ

 本社:東京都江東区辰巳3-7-26 サンイースト辰巳

 ●略歴

 金信彦(きむ・しのん)

 1966年、東京都生まれ。5人兄弟の3男。少年時から母親が経営する焼肉店を手伝い、大卒後、母親の焼肉店で働く。29歳で東京・恵比寿に出店し独立。1年後、24席で月商12000万円強、年商1億5000万円を突破。「恵比寿のトラジ」で有名になり事業を急拡大。

コロナ後-動き始めた海外焼肉店 「米国ニューヨークTORAJI 1号店」

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら