外食の潮流を読む(106)「カルビ丼」と「スンドゥブ」の「韓丼」が安定して強い背景とは
今、「カルビ丼」と「スンドゥブ」を提供する「韓丼」という店がロードサイドで人気を博している。2024年1月末(以下同)で全国70店舗。これに類する業態として、物語コーポレーションの「焼きたてのかるび」(16店舗)、吉野家の「かるびのとりこ」(2店舗)が追随している。
「韓丼」のメニューは「カルビ丼」並590円、「スン豆腐」(豆腐料理であることをアピールしてこのように表記)690円の2本立て。京都市伏見区に本拠を置くやる気が、創業の商売である焼肉店に替わって、カルビ丼のファストフードを想定した。しかし、これだけだと男性客偏重になるということで、女性客も想定してスンドゥブをラインアップした。
1号店は京都市伏見区に10年9月オープン。狙い通り、男性客・女性客共に獲得できたが、思いがけず「カルビ丼」と「スン豆腐」をセットで食べるパターンが人気を博した。これが今では「スン豆腐と焼肉丼(小)」990円からと、人気定番料理に育っている。1号店(新堀川本店)は40坪40席、月商1700万円と繁盛を継続している。ランチタイムにカルビ丼をサクッと食べる需要が多く、客単価は880円となっている。
「韓丼」がチェーン化に向けて動き出したのは、13年7月に2号店(北名古屋店/愛知県北名古屋市)をオープンしたとき。
まず、同店で初めてジェットオーブンを導入。「韓丼」を始めた当初は、店内で生の肉から焼いていたが、これではお客を待たせてしまう。生焼けの部分や、焦げ付きが多い仕上がりにも悩まされていた。そこで、クオリティーの安定、提供時間をしっかりと守ること、食中毒にならないようにということで、先にジェットオープンで肉を焼いて、その後、炭火の焼き台でしっかりと焼き上げるようにした。
この店が大層繁盛店となり「韓丼を営業したい」という人が増えてFCを検討するようになった。FC展開は16年に着手。
FC店舗が広がるようになったのは、北名古屋店の存在感が大きい。このエリアで既に5店舗を展開しているオーナーもいるという。今後、全国展開を進めていく上で、現地を熟知しているオーナーに任せた方が有利と考え、FCの路線は継続していくとのこと。
同店はセルフサービスで商品を提供。入店してセルフレジで注文と会計を済ませ、商品の出来上がりをお客の番号で伝え、食事が終わったら食器をトレーごと返却口に戻す。コロナ禍となる2年前からテイクアウトに着手していたが、コロナ禍で需要が増えて、店舗の売上げはコロナ前よりも大きくなった。
このように「クオリティーが安定」「テイクアウトに強い」ということが備わった業態として「韓丼」は郊外ロードサイドで揺るぎない強さを発揮している。同社では、急ピッチで店舗を展開することなく、店舗ごとの充実を図りながら慎重に展開していく意向だ。
(フードフォーラム代表・千葉哲幸)
◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。