2024年6月度、外食動向調査 フードコンサルティング

2024.09.02 547号 18面

 ●31ヵ月連続前年比増収

 日本フードサービス協会が発表した外食産業市場動向調査によると、2024年6月度売上げは、前年同月比112.4%となり31ヵ月連続の増加を記録した。インバウンド客の増加に加え、例年よりも梅雨入りの時期が遅れたことも外出の機会の増加につながり、客数が前年同月比6.1%増、客単価も5.9%増となり好調な結果であった。

 個別に見ると、前年比を下回った業態は2業態(NATTY97%、フレンドリー96.1%)のみとなり、4~5月にかけての停滞感は払拭され、年明け以降では最も好調な月となった。

 ●外食業界の特徴的M&A事例

 外食M&Aの最近の動向としては、コロナ前18年を直近のピーク(62件)に、コロナ期間中の21年は30件と半数まで落ち込んでいたものの、22年から回復傾向にあり、筆者のもとにも特に年明け以降、さまざまなM&Aの相談が売却、買収ともに持ち込まれている。

 そこで、前回ピークの18年前後の外食M&Aの事例のうち、今後の参考になるであろう特徴的なM&Aの事例を見ていきたい。

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 (1)木曾路による焼肉チェーン「大将軍」の子会社化(20年11月)

 木曾路にとって初の本格的なM&A。千葉県を中心に焼肉店チェーンを運営する大将軍の全株式を投資ファンドより取得し、完全子会社化した。大将軍は、高級焼肉店「大将軍」と中価格帯の焼肉店「くいどん」の業態で合計38店舗を運営しており、「すき焼き、しゃぶしゃぶ」業態の木曾路にとっては、肉の仕入れ中心にコスト削減と付加価値の高い店舗運営を実現し、業績向上につながるM&Aだ。

 (2)小僧寿しによるデリズの子会社化(18年6月)

 小僧寿しは、宅配食代行サービスのデリズを完全子会社化した。持ち帰り寿司の老舗である小僧寿しは、人手不足の影響を受けているデリバリー事業の拡大成長に向け、デリバリー機能そのものを直接取り込むためにM&Aを活用した。

 (3)クリエイト・レストランツHDによるイクスピアリの飲食店事業買収(18年3月)

 オリエンタルランド子会社のイクスピアリは、ディズニーリゾート隣接複合商業施設「イクスピアリ」(千葉県浦安市)を運営。クリエイト・レストランツHDは、イクスピアリの直営飲食店事業を買収した。

 ディズニーリゾート隣接という希少なエリアを押さえたいクリエイト社と、今後の事業の選択と集中を検討したイクスピアリとの双方の思惑がマッチした。

 (4)オレンジフードコートがレンブラントHDに事業譲渡(17年7月)

 ダイエー系列の外食部門であったオレンジフードコートは、「ドムドムバーガー」のフランチャイズ本部と28店舗を、ホテル事業、不動産事業、事業再生を主な事業としているレンブラントHD(神奈川県厚木市)に譲渡した。

 「ドムドムバーガー」は、1970年に1号店がオープンした国内ハンバーガーチェーンの草分け的な存在。旧ダイエーの経営不振による店舗閉鎖に伴い事業縮小が続いていた。異業種による老舗FFチェーンの買収と再生への取組みは、パートスタッフから抜擢された女性社長の活躍もあり、注目を集めている。

 (5)日本KFCによるピザハット売却と、BYO社との資本提携(17年6月)

 日本KFCは、連結子会社の日本ピザハットとフェニックス・フーズの全株式を投資ファンドに譲渡。当時の日本ピザハットは業績低迷が続き、その状況で米国本社のフランチャイズ本部が日本国内の出店加速を要望したことから、日本KFC側と、経営戦略に齟齬(そご)が生じ、売却に。

 一方で、日本KFCは18年2月、和食居酒屋「えん」を運営しているビー・ワイ・オーと資本業務提携を結んだ。同社は収益の柱である「KFC事業」を生かした異なる店舗業態の拡大を考え、M&Aによるビー・ワイ・オー社との提携を行った。ビー・ワイ・オーは国内約110店舗、海外にも複数店舗を展開しており、「えん」の店舗運営で培った知見と、日本KFCのFC店舗の運営ノウハウを組み合わせ、和食のFC店舗を増やしていく方針。

 (6)ミツウロコグループHDがスイートスタイルを子会社化(17年4月)

 燃料小売大手のミツウロコグループHDは、ベーカリー「麻布十番モンタボー」、カフェ「元町珈琲」を展開するスイートスタイルの全株式を、投資ファンドから取得し完全子会社化。

 異業種によるフードビジネスの本格進出に向けたM&Aであり、スイートスタイルとの連携でシナジー効果が得られ、業績向上につながると判断した買収。

 (7)吉野家HDによる「せたが家」買収(16年6月)

 吉野家HDは、主力の牛丼業態以外の拡大を目指し、人気ラーメン店「せたが屋」「ひるがお」の株式会社せたが屋との資本提携を行った。吉野家HDは、06年5月に「はなまるうどん」の株式会社はなまるを買収しグループ化。麺業態の拡大を図る方針。

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